発見
農の現場から
埼玉農民連会長 立石昌義
新型コロナや豚熱の感染収束に向けて
感染症は自然災害や戦争よりも多くの人々命を奪い、食と農を脅かしてきました。
埼玉県では、1990年10月、さいたま市の幼稚園から発生した食の安全を危機に陥れた腸管出血性大腸菌О―157、牛飼育農家を直撃したBSE(牛海綿状脳症)問題と養鶏農家を苦しめた鳥インフルエンザと続き、昨年には豚熱(CSF)、今年は現在に至るまでの新型コロナウイルス感染症の広がりが止まらない状況となっています。
収束にはほど遠い感染の広がり
豚熱は2018年9月9日、岐阜県恵那市で発生し、19年9月13日には埼玉県秩父市で罹患した豚が発見され、関東初の豚熱発生で一気に危機感が広がりました。埼玉農民連は、自主支援で当選した大野元裕知事に対してワクチン接種を江藤拓農水大臣に要請するよう申し入れを行いました。大野知事の要請に江藤大臣は、豚熱の関東へ侵入に対してステージが変わったとワクチン接種に踏み切りました。
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豚熱問題で埼玉県に要請する立石さん(左から2人目)=2019年10月15日(日本共産党埼玉県議団提供) |
しかし問題は、現状で47都道府県の半数近く(21都府県)のワクチン接種にとどまり、今年1月の沖縄での豚熱の広がりに見られるように豚熱感染収束には程遠い状況です。日本政府は、ワクチン接種を広げるとOIE(国際獣疫事務局・動物の保健衛生を守る政府間機関)に汚染国と認定され輸出の障害となることを恐れているためです。
さらに、差し迫った脅威となっているアジアを中心に世界的に広がるワクチンのないアフリカ豚熱(ASF)の日本上陸を阻止することも重要な課題です。
今後の問題としては、世界に誇る豚熱ワクチン(1969年に実用化)を開発した清水悠紀臣北大名誉教授が、世界的に豚熱研究者がほとんどいなくなった現状から科学的で長期的な研究者の育成の必要性を強調していることに留意すべきだと思います。
食と農、人の生命を感染症から守る運動
治療薬の治験とワクチン製造を
新型コロナは、予防のワクチンも治療薬もなく体に抗体も存在しないため大変恐れられています。
感染収束に向けて、未知の新型コロナの実態を明らかにして治療薬の治験とワクチンの製造に人も資金も思い切った投入を必要としています。治療薬もワクチンも副作用の問題がありますが、生命を救うこと第一のために全力を注ぐべきだと思います。現在行われているのは、14世紀ヨーロッパでのペスト流行で人口の半数近くが失われた時に行われた古典的な都市封鎖に近いものです。
新型コロナは人とモノが激しく行き交う新自由主義に基づくグローバル資本主義を背景として起きたものです。私たちが目指すべきは、食糧とエネルギーの自給と医療体制の充実で感染症を寄せ付けない世界をつくり上げることです。
(新聞「農民」2020.5.18付)
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