コロナ対策 アメリカと日本
規模・スピード段違い
こんなに違う! 農業・食料支援予算
アメリカ=6.2兆円
日本=0.5兆円+アルファ
「消毒薬を体内に注射してみよう」「ウイルスを世界にバラまいた中国に損害賠償を請求する」――トランプ大統領の暴言がきわだっています。しかしそれにもかかわらず、アメリカ政府の新型コロナウイルス対策は、後手後手に回っている安倍政権の対策をはるかに上回っています。
アメリカ政府は3月27日に240兆円の経済対策にもとづいて、おとな1人につき13万円、17歳未満の子どもには5万5000円の現金給付を4月から開始。さらに4月24日には、新型コロナ流行で打撃を受けた中小企業に対し、最大8週間分の従業員給与を政府が肩代わりする制度への追加予算として52兆円を計上しました。合計約300兆円にのぼります。
迷走の末、4月30日に成立した日本の補正予算は26兆円。規模・スピードとも段違いです。
アメリカ
農家に損失補償85% 余剰農産物買い上げ
違いは、農業・食料対策でも明らかです。
アメリカの農業・食料関連コロナウイルス対策予算は6兆2000億円で、日本の農林水産関係補正予算5448億円の10倍以上にあたります。
アメリカのコロナ対策の内容は(1)価格下落の85%まで損失補償する農家への直接支払い、(2)余剰農産物を農務省が買い上げ、貧困世帯や子ども向けに供給する、(3)暴落に備える価格保障財源の上積み、(4)低所得者向け食料援助制度(フードスタンプ)財源の追加の4本柱です。
アメリカの価格保障のしくみ
アメリカの価格保障は(1)生産費と市場価格の差額を国家予算で補てんする「不足払い」と、(2)暴落の時に政府が買い支える「価格支持融資」の二本立て。これによって、どんなに暴落しても、アメリカの農家は生産費の8〜9割が保障されます。今回のコロナ対策は(2)の財源の上積みです。
暮らしと経済を守る
財政措置は待ったなし
直接給付や余剰農産物の買い上げという緊急対策に加えて、コロナ被害による世界的な経済危機に備えて価格保障財源を確保するという恒久対策に手を打ったものです。
姉歯暁・駒沢大学教授は「給食に栄養補給を頼っていたシングルファミリーや……炊き出しがなくなり困惑するホームレスをはじめとする社会的弱者に対して、余剰食材をすべて買い上げて箱詰めにして届けるくらいのことをしてみてはどうか」と提言していますが、アメリカではある程度実現しているといってよいでしょう(農業協同組合新聞、5月4日)。
安倍政権
際立つドケチぶり
一方、安倍政権の対策はどうか。
(1)に対応するのは経産省予算の「持続化給付金」です。これは収入が50%減った個人(農家)・法人に100万円・200万円を上限に給付するというもので、予算額は2・3兆円。全産業が対象で、農家がどれくらい受け取れるのか不明です。農家だけを対象に1・7兆円、しかも価格が5%下がった場合に損失の85%を補償するアメリカとは大違いです。
暴落が激しい牛肉対策には300億円の予算で1頭あたり2〜5万円支給されますが、肉牛農家の損失は1頭30万円で、1ケタ違います。アメリカの損失補償予算は畜産だけで1兆円で、日本の農林水産全体の補正予算の2倍です。
(2)〜(4)に対応する対策はありません。しいてあげれば、国産農水産物の需要喚起、販売促進対策ですが、イベントや販売サイト解説の費用に対する補助、フードバンクなどへの紹介・あっせんが主なもので1400億円。
アメリカ農務省が3200億円の追加予算で、野菜・果物、乳製品、食肉をそれぞれ毎月100億円ずつ買い上げてフードバンクなどに供給し、さらに低所得者・休校中の児童への食事支援財源として2・7兆円を追加したのに比べれば、安倍政権のケチケチぶりは際立っているといわなければなりません。
緊急事態宣言が5月末まで延期され、コロナ被害の長期化が不可避の今、検査体制のすみやかな強化と、需要蒸発、価格暴落に対する財政措置は待ったなしです。
(新聞「農民」2020.5.18付)
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