新型コロナ 牛肉価格が大暴落
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4月27日の県への要請行動の様子 |
農民連からは久保田彰孝会長や現場の生産者ら7人が参加し、制度資金を早急に創設することや減収分を補てんする対策、マルキン制度(※)の拡充など8項目を要請しました。
これまでは肥育牛1頭を出荷すれば手取りが50万円は残るというのが相場でした。ところが、直近の手取りは1頭あたり5000円程度にまで落ち込んでいます。肉牛肥育を営む会員は、「エサ代が払えないどころか、納税や水光熱費などの支払い、生活費に食い込んでいる。このままでは半年もたない」と訴えました。
県は「コロナによる需要減が下落の原因であり、消費拡大が必要。学校給食での県産牛利用の補助や消費拡大キャンペーンを通して、地元での活用を呼びかける」と回答。そして、「現行のマルキンだけでは十分ではないというのはその通り。県としても肥育牛の素子牛購入に1頭あたり1万円の補助を出す。政府の対策もこれまでは大規模経営むけが多かったが、いま出されているコロナ対策では小規模農家も対象になっているので、この活用をよびかける。無利子融資もあっせんする。様々な対策の組み合わせで経営を支えていきたい」と答えました。
要請に参加できなかった前沢牛生産者の会員は県の対策を聞いて、「1頭1万円の補助…。これだけだと一けた違うなあという感じです」と感想をもらしました。
しかし、これで終わりではありません。「JAや肉牛生産者団体の動きもこれからなので、これを機に対策を求める声をさらに広げていきたい」と語っています。
※肉用牛肥育経営安定交付金制度(マルキン)とは 肥育経営の粗収益が生産費を下回った場合に差額の9割が補てんされる。残りの1割は赤字のままになるほか、支払いが2カ月遅れになることや、基準となる生産費が実態にあわず低い水準だとの声も多いが、畜産を下支えする重要な制度であり、農民連は緊急に10割補てんへ拡充するよう求めている。
岩手町川口の久保勝雄さん(86)。娘の玲子さん、孫の梨菜さん(26)とともに、肥育牛経営を営んでいます。県への要請にも参加しました。
以前は子牛から肥育していましたが、現在は黒毛和種の経産牛(繁殖の役目を終えた母牛)を買い、肉牛として出荷できるまで肥育しています。導入する牛が子牛より安いこと、肥育期間が短いためエサ代をかけずに次々と出荷していけるのがメリットです。こだわりは「家畜市場から良い牛を選んで買ってくることと、牛の健康に気をつけてエサを十分に与えて肥育すること」。
牛舎の作業は3人が、家族で協力しあいながらやっています。稼ぎ頭の梨菜さんは手伝いを始めて5年目。ふだんの作業はかなり習熟してきました。20頭の牛一頭ごとに声をかけていく姿と清潔な牛舎から、丹念な仕事ぶりが垣間見えます。「今でも経産牛のほかに子牛からの肥育も数頭手がけており、今後は肥育農家としてやはり子牛からの肥育を増やしていきたい、挑戦したいと考えていたところでした。しかしコロナの影響で、このままでは子牛の導入どころか、やっていけない」と梨菜さん。
説明する梨菜さん(左)と田村事務局長 |
久保さんは岩手町農民組合の田村正さんに相談し、4月の要請に参加。これをきっかけに、「持続化給付金」(上限100万円)の申請や「農林漁業セーフティネット資金」(上限1200万円)の無利子融資を申請する方向で検討しています。田村さんは、「畜産も、野菜も、山仕事もあって初めて維持されるのが地域社会です。一人もこぼれおちることなく、次の世代につないでいかないと」と決意を語っています。
[2020年5月]
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