過去最低の食料自給率
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実際、米輸出国ではベトナム、インド、カンボジアが、小麦輸出国ではロシア、ウクライナが輸出禁止・規制に乗り出しており、2008年の食糧危機の様相に似てきています。また、アメリカでは3月に卵販売量が44%急増し、卸売価格が180%上昇したといいます。
日本では、マスクのような品切れは食品では起きていませんが、新型コロナによって、▽海外技能実習生の入国規制による労働力不足、▽輸出と海外からの観光客急減による和牛価格暴落など、海外に依存するリスクが現実のものになっています。
さらに、輸出制限や農業生産の混乱が拡大すれば、自給率世界最低の日本にとって打撃は深刻にならざるをえません。
「新型コロナの長期化で農産物のサプライチェーンが影響を受ければ、食料を多く輸入している中東各国や韓国、日本などは深刻な打撃を受ける」(韓国「中央日報」4月1日)。
「影響は限定的だ」(農水省食料安全保障室)などとタカをくくっている場合ではありません。
▽労働力の海外依存、▽輸出額目標「5兆円」という輸出依存、▽自給率向上を放棄した輸入依存という「三依」政策は新基本計画の柱です。とって付けたように計画の末尾に「新型コロナ対策」を補足してお茶を濁して済む話ではありません。
従来、食料自給率(カロリーベース)は「食料安全保障をはかる上で基礎的な指標」(基本計画)として、輸入飼料による畜産物の生産分を除いて計算されてきました。しかし今後は、輸入飼料を使った畜産物も国産として計算する「食料国産率」も併用するというのです。
これによって「自給率」は37%から46%になり、“自給率はほぼ半分だから、どうぞ安心を”と説明できるというわけです(表)。
もちろん、輸入飼料を与えた畜産物が、店頭で輸入品扱いされているわけでも、消費者が国産品と認めていないわけでもありません。また、牛肉43%、豚肉48%など単品の自給率は輸入飼料を使った畜産物を含めています。しかし、自給率が過去最低に落ち込んだ瞬間に、こういう数字の操作をするところに安倍政権の正体があらわれています。
16・8兆円を108兆円に見せる手口と、37%の自給率を46%に見せる手口は共通しているといわなければなりません。
早場米地帯では田植えが始まっています(宮崎県高鍋町) |
この点について、北海道新聞社説(2月20日)は「新たな指標は輸入飼料への依存度をさらに高めかねず、政策本来の趣旨に逆行している」と指摘。
さらに「背景として思い当たるのが昨夏の日米首脳会談である。首相はトランプ大統領の要請をのみ、米中貿易摩擦でだぶついた飼料用トウモロコシの大量輸入を約束した。トウモロコシの輸入が増えても自給率が上がる算定方法をわざわざ用いるのは、農家のためではなく、日米両首脳にとって政治的に好都合だからではないのか」と強い疑問を投げかけています。
財務省は飼料用米を“金食い虫”扱いし、単価の引き下げや野菜などへの転換を強硬に迫っています。農水省がこの削減圧力をはね返す根拠としてきたのが110万トンという目標です。しかも業界によれば、飼料用米の年間使用可能量は約120万トンに上り、増産の余地はまだまだあります。
それにもかかわらず生産目標を110万トンから70万トンに3分の2に引き下げる――これは、財務省とトランプ大統領への二重の忖度(そんたく)だといわなければなりません。「基本計画」の副題は「我が国の食と活力ある農業・農村を次の世代につなぐために」。立派な看板が泣こうというものです。
(次号につづく)
[2020年4月]
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