漁師にサケ刺し網漁認めよ
「浜の一揆訴訟」控訴審
仙台高裁が不当判決
岩手県の小型漁船漁業者が刺し網によるサケ漁の許可を求めて県を相手に起こした「浜の一揆訴訟(さけ刺し網漁不許可取消・許可義務付請求訴訟)」の控訴審で、仙台高等裁判所は2月25日、原告の請求を棄却する判決を下しました。
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裁判所に入る原告団(右が藏団長) |
岩手県沿岸の小型漁船漁業者は、タラやカニ、底魚など、季節ごとに様々な魚をとって生計をたてています。漁獲が減る秋、頼りになるのはサケです。ところが、岩手県内では漁業調整規則により、固定式刺し網によるサケ漁が認められていません。うっかりサケを捕獲すると「密漁」となり、県条例で「6カ月以下の懲役、若(も)しくは10万円以下の罰金」に処せられます。
刑罰を科せられるだけでなく、漁業許可の取り消しから漁船・漁具の没収にまで及ぶ制裁が用意されています。網にサケがかかれば、もったいなくても海に捨てなければなりません。漁師にとって、サケ刺し網漁は切実な課題です。
このことから、原告団は、サケ刺し網漁を不許可とする県の処分を取り消すよう盛岡地裁に提訴しました。しかし2018年3月に盛岡地裁は原告の請求を棄却する判決を下しました。
これを不服として原告団90人が仙台高裁へ控訴。控訴審では7回にわたる口頭弁論が開かれ、現場の漁師や研究者による証拠資料を書面で示し、サケ刺し網漁を認めることの合理性を主張しました。
しかし仙台高裁は原告の訴えを棄却するとの判決を下し、原告の敗訴となりました。「漁業調整」と「資源保護」を理由に、県の主張を丸のみする不当判決です。
判決後の報告集会で、原告団長の藏桾スさん(岩手県漁民組合組合長)は「このように漁師をないがしろにする姿勢がまかり通れば、沿岸漁業はたいへんなことになってしまう」と怒りをこめて語りました。
原告代理人弁護士の澤藤統一郎弁護士、澤藤大河弁護士は「県にこれだけ反論の資料を出させて追い詰めてきた。起訴の時点では考えられなかったこと。5年間の裁判闘争の成果を生かし、様々な角度でなんとしてもサケ刺し網漁の実現を」と呼びかけました。
参加者からは「後継者でがんばっている息子に判決を知らせる電話をした。『これからどうするのか』とがっかりしていた」など、悔しさを語る発言が相次ぎました。同時に「最高裁で最後までたたかおう」という声も上がりました。
原告団はこれをうけ、最高裁へ上訴。また、岩手県漁民組合として県や水産庁への要請を計画しています。浜の一揆はまだまだ続きます。
(岩手県農民連 岡田現三)
(新聞「農民」2020.3.23付)
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