「農民」記事データベース20200309-1399-12

ゲノム編集食品が食卓へ

トレーサビリティーと表示が必要


「結果はやってみなければわからない」
表示制度など社会的な議論もっと必要

 シンポジウム「ゲノム編集食品が食卓へ〜表示とトレーサビリティの必要性」が2月24日、都内で開かれ、約130人の参加者が集いました。主催は、「たねと食とひと@フォーラム」。

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ゲノム編集食品について意見を述べるパネリストら

 はじめに、フォーラム代表の吉森弘子さんから開会あいさつがあり、ゲノム編集食品が日本で食卓にのぼろうとしているもとで、産地から食卓までのトレーサビリティー(追跡可能性)を確立し、選ぶ権利、作る権利、食べる権利を保障して、「安全と安心をつなげることが大事」だと語りました。

 次に、塚谷裕一さん(東京大学大学院理学系研究科教授)と石井哲也さん(北海道大学安全衛生本部教授)から問題提起がありました。

 塚谷さんは、「ゲノム編集作物の健全な利活用のためには」と題して報告し、「今のゲノム編集技術は、目指す能力のごく一部しか発揮していないのが現状。従って、ゲノム編集は遺伝子操作ではないから安全、自然の突然変異と同じだから安全などというのは誤解にすぎない」と述べました。

 さらに「これまでは、育種時間の短縮、出荷のメリットなど開発・産業側の利点ばかりが強調されてきたが、これでは消費者には受け入れられない。また、遺伝子編集の結果がどうなるかは、今の生物学の知識ではやってみなければわからない」と指摘し、届け出制の義務化、違反に対する罰則強化、環境への負荷の懸念などの課題をあげました。

 石井さんは、「ゲノム編集食品の表示のあり方を考える」のテーマで発言し、「非表示」の場合は、「新しい技術の利用をまったく伝えないのは好ましくない」と述べました。

 表示した場合でも、「遺伝子組み換えでない」では、有機食品を好む人に非誠実な表示と映るおそれがあり、「ゲノム編集」表示は、科学的で誠実な表示であるが、一方で「ゲノム編集ではない」というネガティブな表示が展開されるおそれがあることを指摘しました。さらに「遺伝子組み換えでないゲノム編集」表示では、消費者には複雑で理解しにくいことを強調。「省庁による拙速な検討でなく、ゲノム編集技術についての社会的な議論がもっと必要だ」との立場を表明しました。

 その後、竹下達夫さん(サナテックシード株式会社代表取締役会長)から、血圧を下げる「ゲノム編集高ギャバトマト」の商品化に向けた報告がありました。

 水野雄太さん(NHK報道局・科学・文化部記者)からは、ゲノム編集食品の流通が始まっているアメリカを取材しての話があり、すでに流通しているゲノム編集大豆油が表示なしに使われ、開発会社が日本での商品化を熱望している現状を報告しました。

 最後に、フォーラムの「ゲノム編集食品調査チーム」から、現在販売中のトマトジュースについて、ゲノム編集作物からできた原料に切り替える予定があるかどうかの企業への調査報告があり、8社中7社が「切り替えの予定はない」との回答だったことを紹介しました。

(新聞「農民」2020.3.9付)
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2020年3月

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