全国に広がる種子条例づくり
公共の種子を守ろう
主要農作物種子法(種子法)が2018年4月に廃止されて以降、各道県で、公共の種子を守ろうと、種子条例づくりが広がっています。
日本の種子(たね)を守る会によると20年1月17日現在で、兵庫、新潟、埼玉、山形、富山、北海道、岐阜、福井、宮崎、鳥取、熊本、長野、宮城、栃木、茨城の15道県で条例が制定されています。
栃木県は条例制定済みになっていますが、その中身は、育種ほ場の選定、審査、種子生産計画、発芽率等の品質管理を民間任せにし、県は責任をもたず、国が種子法を廃止した行為を追認する内容になっています。
県議会が請願を採択し、条例案を準備中なのが、岩手、愛知、広島、石川の4県。知事が条例制定、または条例制定に向けた検討会設置を明言しているのが、滋賀、島根、三重、鹿児島の4県になっています。
市民団体や自治体議員による動き・働きかけをみると、千葉県は、「種子を守る千葉県条例を求める実行委員会」が発足し、議員アンケートなどを実施しています。福岡県は、市民団体、県議を中心に勉強会を実施し、市町村議会に県への条例制定を求める意見書提出の請願などを行っています。高知県は、「こうち食と農を考える会」が発足し、今後署名活動を実施する予定です。沖縄県は、「生物多様性種子条例を求める会」が発足し、署名活動を行っています。徳島県は、昨年10月に「種子を守る会・徳島」が発足しました。
静岡県では、「日本の種子を守る会」会員による地元市町村議会への働きかけが行われ、県内35市町村議会に県への条例制定を求める意見書を出すよう陳情し、昨年12月定例会の時点で5市1町が採択、1市が趣旨採択しました。
米どころ宮城県で種子条例制定
種子法の廃止は、米どころ・宮城県でも、事の重大性に衝撃が広がりました。廃止が決まった直後の2017年、宮城食健連として、県に種子条例を制定させる運動を展開しようと決め、学習会、議会対策等を確認。その年の総選挙での安倍・自民党の大勝にいっそうの危機感を強め、運動を強化することで一致しました。
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種子条例と種苗法について学んだ学習会=2月20日、国会内 |
11月に東北農民運動交流会が松島で開催され、東京大学の鈴木宣弘教授を講師に種子法の学習会が行われ、宮城食健連のメンバーも参加しました。
18年は、各団体での学習会、宣伝活動、地方議会への働きかけなど活発な運動を食健連を中心に展開。9月には、県母親大会の「食の安全・安心を求めて」の分科会で助言者となり、教室に入りきれないほどの70人が参加し、盛況でした。
大崎地方では、参加された93歳の方が「地元でも学習会をぜひ」と要望し、学習会が開催され、古川、中新田地域でも行われました。大崎市議会では、県知事に種子条例の制定を求める意見書が採択されました。
栗原地域では、農民連女性部が中心に、種子法の学習会を行いました。栗原市には、農民連会員の市議が4人おり、この市議団を中心に種子条例の制定を求める意見書が採択されました。議会の意思を伝えるために、議長、産業経済委員長と何人かの議員が直接、県知事への申し入れを行いました。
各会派に申入れ条例必要と回答
18年12月県議会では、県議会議長が大崎市出身で農民であったこともあり、議会対応を相談、各会派に要請した方がよいとのアドバイスをいただき、さっそく食健連として最大会派の自民党に申し入れました。
自民党は幹事長が対応し、「種子条例は必要だ」と前向きでした。他会派にも手分けして申し入れ、「条例は必要」との返事がありました。
県議会では、次の議会に知事提案で議案を提出すると知事が表明。19年の9月議会で全会一致で可決され、条例は2020年4月1日から施行になります。
(宮城農民連 鈴木弥弘)
(新聞「農民」2020.3.9付)
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