第31回農民連女性部総会
持続可能な社会へ
ジェンダー平等の農村に
“私たちの家族農業”を発展させよう
5年後、10年後の未来をともに築こう
第31回農民連女性部総会が2月4、5の両日、愛知県蒲郡市のホテル竹島で開かれ、全国22県と1団体から84人が参加しました。昨年の総会スローガン「農村女性の輪を広げ、憲法を守り、『家族農業の10年』を成功させよう――持続可能な社会をめざして」が、今年の総会にも引き継がれ、さらに深く受け止められ、熱く語り合われた総会となりました。
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発言に熱心に聞き入る参加者 |
家族農業の10年 力に農政転換を
農民連女性部事務局長の藤原麻子さんが議案を報告しました。藤原さんは、昨年は巨大台風や豪雨などの災害が連続して発生し、農地や農家経営にも大きな被害となるなど、地球温暖化の影響が深刻化している現状に触れながら、持続可能な社会や農業のあり方に転換していく必要性を強調。「昨年から始まった国連『家族農業の10年』と『農民の権利宣言』を力に、農政の転換と農業・農村の再生をめざしていこう」と訴えました。
そして「これらの運動の中心に、ジェンダー平等が位置付けられている。農地の取得や相続、融資を受ける権利などを含めた、女性に対するあらゆる差別をなくしていくことが、社会と農業全体の発展にもつながる課題となっている」と述べ、「家族農業の10年」とジェンダー平等に一体的に取り組み、運動していこうと呼びかけました。
森の生態系参考に農法を見直す
議案報告に続いて、今年はシンポジウムを行いました。テーマは「私たちの家族農業を考える〜5年後、10年後の未来をともに築こう」です。愛知学院大学准教授の関根佳恵さん、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン代表の村上真平さん、農民連女性部副部長の久保田みきこさん、愛知県豊橋農民組合女性部の原田愛子さんの4人をパネリストに迎えました。
関根さんは、国連「家族農業の10年」と「農民の権利宣言」の成立には女性の重要な貢献があったことを紹介するとともに、世界の農村女性が直面している困難な状況――肥料や機械の利用率も低く、所得も低い、融資や教育なども受けにくい、農作業に加えて家事労働もあり、農村女性特有の重労働がある、など――に触れ、こうした状況は実は日本も同様で、「日本でも女性自身の意識改革を、男性の意識改革と合わせて行う必要があるのでは」と投げかけました。
村上さんは、三重県で実際に有機農業を実践している立場から「気候変動に最も対応できる農業」について提言。「それには森を参考にすればよい。最もうまく適応している地上の生態系は自然の森」と述べ、 地面が植物、有機物によって覆われる「多層性」、多様な植物によって生態系バランスが安定する「多様性」、有機物の循環で高い保水性が保たれる「循環性」の3つの要素が重要だと強調しました。
次郎柿生産者の原田さんは、義父から生産を引き継ぎ、低すぎる収益に驚いて、少しでも手取りを上げようと地域の柿農家も巻き込んで加工や販売に取り組んできた歩みを紹介。「悩みは高齢化。この農村と農地を守っていくには、やはり小さな農家が共同することが必要」と述べ、大きな拍手がわきました。
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懇親会ではNHKの朝のドラマ「スカーレット」のテーマ曲「フレア」に合わせてみんなでダンス |
学びと共同で農村再生したい
ディスカッションでは、事前に参加者から集められた、5年後、10年後の自分や地域の農業を展望したアンケートをもとに発言が続きました。
熊本でトマトと米を作っている紺谷本裕美子さんは、「あと5年は今の規模でがんばって、70歳になったら熱帯フルーツとか新しいことに挑戦したいと夫と話している。周りの農家は高齢化しており、わが家で預かる田んぼが増えた。今、地域の子どもたちと米作り体験をしていて、食べ物や農業の大切さがちゃんと伝わっていることを実感している。あと10年くらいはもう一つのライフワークとしてがんばっていきたい」と話しました。
また会場からは、「多収性や効率性を求められる今の農業体系のなかで、循環型農業に転換していく突破口は何か」など、具体的な質問が噴出。村上さんは、「一度に全部を変えるのではなく、まず面積の1割でやり方を変えてみるとよい」などと具体的に回答し、女性たちも食い入るように聞き入っていました。
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熊本、福岡の女性たちが披露したタヌキ踊りで大爆笑に包まれた懇親会 |
家族で力合わせ10年後も農業を
2日目の討論では、17人が発言しました。
高知県の野田睦美さんは、「夫と2人で文旦とショウガを生産しているが、地球温暖化の影響なのか年々、収穫時期が遅れており、20年前には年内に終わっていた収穫作業が、今は12月の終わりに収穫が始まるようになった」と発言。
宮城県の菅原栄子さんは、「農家の暮らしは人育て。3世代9人家族で、田んぼにも孫を連れていき、休みには親戚も大勢集まり、農家ならではの豊かさを大切にして、次世代に農業を継いでいきたい」と述べました。
地域の新日本婦人の会の若いお母さんと子どもたちとの年間を通した野菜作りを報告したのは、千葉県の斎藤教子さんです。「土も触ったことのない子どもたちはもちろん、お母さんにも農業を知ってもらう良い機会になっている」と話しました。
同じく千葉県の養豚農家の山崎正子さんは、台風被害やCSF(豚コレラ)など試練が相次いだ昨年を振り返りながら、「わが家はまさしく家族農業。夫と息子の間を私がうまく“通訳”しながら、これからも家族で仲良く、おいしい豚肉を消費者に届けていきたい」と発言し、会場は笑いの渦に包まれました。
総会には、日本共産党参議院議員の紙智子さん、農民連の笹渡義夫会長が駆け付け、来賓あいさつしました。
(新聞「農民」2020.2.17付)
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