「農民」記事データベース20200203-1394-16

県内唯一の炭焼き農家を訪問

島根県農民連役員
西森隆さん 多恵子さん夫妻
(浜田市在住)


炭焼きは山を再生しながらつくるもの

 国内有数の木炭の生産量を誇った島根県。エネルギー転換や輸入増などで生産者が激減。今では問屋に納入できるほどの量を生産している農家は県内でたった1軒になってしまいました。

 その唯一の農家、島根県浜田市の西森隆さん(71)は島根県農民連の役員です。妻の多恵子さん(68)と一緒に米50アールを耕作しながら、炭焼きを営み、年間約20トンを生産しています。「今では集落で炭を作るのはうちだけになってしまった」と話す西森さんは38歳ころから父親の指導のもと、炭焼きをはじめました。

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笑顔の西森さん夫妻、後ろに見えるのが炭焼き小屋

 「もともとは葉タバコを栽培する傍らで炭焼きをしていました。タバコを栽培するとすごく土がやせていきます。63歳の時に辞め時と思い、タバコから炭焼き一本にしました」と西森さんは話します。

 全量を問屋に 粉炭は炭団原料

 問屋さんへの全量出荷が基本。「粉炭まで問屋が買い取ってくれます。粉炭から炭団(たどん)を作っているのも国内ではこの問屋さんだけになってしまいました」

 炭焼きに適した山が残っている

 この地域は昔から炭焼きを行っていたと西森さんは言います。「山に入って切り株を見るとそれがよくわかります。主には樫の木を切り出すのですが、切ってもまた生えてくるように山が作ってあるんです。なので資源は無限にあります。2ヘクタールほどの立ち木を購入してあるので、しばらくは炭焼き材料には困りません」

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炭焼き窯の様子を見る隆さん

 良い炭で一献 一人でにんまり

 「火が付きやすく持ちの良い炭」をめざす西森さん。「均一に良い品質の炭を焼くには技術が必要です」と話します。「コナラは夏でも冬と同じように炭を作れますが、樫は木の性質自体が変わるせいか、夏に作る樫炭の品質が安定しません」

 その品質にひかれて直接購入しに訪れる人も少なくありません。「一から完成品まで作り上げて、それを使ってもらえるのはうれしいです。また、満足な出来の炭が焼けたときに一人でにんまりしながら飲むのも楽しいです」とやりがいを語ります。

 西森さんは「生産者が減って炭づくりの技術が失われるのは困る」と語ります。最近は若い人が炭焼きの研修に訪れるようになりました。「炭づくりは山を再生しながら作るもの」。山と地域・環境を守る炭づくりの継承が求められています。

(新聞「農民」2020.2.3付)
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2020年2月

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