第4回食と漁の地域フォーラム
企業参入など危険多い新漁業法
全国で条例制定の運動を
全国沿岸漁民連 岩手県漁民組合
岩手・陸前高田市
1月19日、岩手県陸前高田市で「第4回食と漁の地域未来フォーラム――『新漁業法』は沿岸漁業と漁協経営にどのような影響をおよぼすか」が開催されました(主催・JCFU全国沿岸漁民連絡協議会、岩手県漁民組合)。
会場には県内外から180人が参加。また、各市町議会議員はじめ来賓も数多く出席しました。戸羽太陸前高田市長は「漁業への企業参入などは、地域の漁業者との十分な合意がないままに進めるべきではない」とあいさつしました。
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漁業の未来について語り合ったフォーラム |
制度改悪に対し立ち上がる漁民
冒頭に、二平章さん(家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン副代表、茨城大学客員研究員)が、この間の水産改革・クロマグロ規制など一連の制度改悪にあたり全国の漁民が立ち上がっていることを報告。今回のフォーラムが長崎県対馬市、香川県丸亀市,青森県大間町と続いてきた一連の企画に続いての開催だと強調しました。
基調講演では佐藤力生さん(三重県鳥羽磯部漁協監事・元水産庁資源管理推進室長)が新漁業法の問題点を解説。(1)知事へ権力を集中させることで漁業者の自主管理体制が弱められてしまうこと、(2)免許基準をあいまいにして企業参入許可など知事による恣意的な運用をする危険性があること、(3)資源管理を個別割当方式にすることで資源が私的資本化されてしまうことを指摘しました。そして、これにより生じる問題をくいとめるための県地方条例案を具体的に示し、「全国で条例制定の運動を」と呼びかけました。
これをうけ、澤藤大河弁護士が、法律と条例の関係性を説明。国による法改悪に立ち向かうために、条例制定は今後大事な運動の流れになると強調しました。
漁民の話し合いの重要性を力説
パネル討論では赤間廣志さん(宮城県海区漁業調整委員)が「旧漁業法にあった『漁業の民主化』という文言が新法では削除された。しかし、民主主義は永遠の課題」と説き、漁業者同士の話し合いの重要性を力説しました。菅野修一さん(岩手県海区漁業調整委員)は「岩手の海区委員会は、私たち漁民連選出の委員しか発言しない。公選制が廃止されると、私たちのように発言する委員は任命されなくなるだろう」と述べました。
笹渡義夫さん(農民連会長)は、一連の水産改革が国連「家族農業の10年」と逆行することを指摘。種子条例の制定が広がっていることをうけ、漁業条例も全国に広げることが重要だと語りました。
フロア討論では若手漁民が意見
フロア討論では若手漁師2人から「具体的な影響がただちに出るのか」「まき網船の規制をどう進めるか」という具体的な問題が語られました。また、岩手県漁民組合顧問の佐藤照彦さんは「資源も担い手も減って、浜はひっ迫している。政治を変えなければ」と述べ、また、藏桾スさん(岩手県漁民組合組合長)は、「フォーラムを力に地域の運動を広げていこう」と呼びかけました。
岩手県漁民組合はこのフォーラムを力に、県知事への漁業振興要望書の提出を予定しています。
(岩手県農民連 岡田現三)
(新聞「農民」2020.2.3付)
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