「農民」記事データベース20200203-1394-01

高品質で安全な豚肉を
「地産地消」で消費者に

群馬・安中市
下仁田ミート(株)が農水大臣賞を受賞


本物のおいしさは飼育が原点
「生産・加工・販売」を一貫経営

 農水省と全国担い手育成支援協議会(事務局は全国農業会議)が、全国の優れた農業者を表彰する「2019年全国優良経営体表彰」で、群馬農民連の会員が数多く役員を務めている「下仁田ミート株式会社」(群馬県安中市)が、販売革新部門の農林水産大臣賞に輝きました。CSF(豚コレラ)や輸入関税引き下げなど、大きな荒波が養豚業にふりかかるなか、高品質で安全な豚肉を届けようと長年にわたって続けられてきた努力が高く評価され、生産者たちを大きく励ましています。

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女性社員に抱かれた子豚。カワイイ

 生育情報が全て公開できる

 下仁田ミートのこだわりは、なんといっても「高品質と安全性にこだわって、生産・加工・販売を一貫経営」していること。通常は生産・加工・流通の一部だけという農家や企業が多い中で、下仁田ミートでは自社で豚を育て、食肉加工して、県内4つの直営店を中心に生協やスーパー、小売店などに地産地消で直売しています。

 安中市と東吾妻町の2カ所にある養豚場では、「本物のおいしさは飼育が原点」を理念に、母豚約1200頭、育成豚186頭、種雄豚37頭、肥育豚約1万5000頭を、近代的な設備で飼育。飼料はトウモロコシ主体の自社の指定配合を給餌しているほか、県産・近県産の飼料用米を与えた「米豚」ブランドもあり、消費者からも「さっぱりしていて臭みがない」と好評を得ています。

 また適正密度による飼養管理などにより、近年、多用が問題となっている抗生物質の使用も、基準の半分ほどの哺乳期に限定。豚を健康に育てることで、上質な豚肉の生産に結びつけています。

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衛生管理の徹底した豚舎

 このように生産から販売までをトータルで行うことでトレーサビリティーもきちんと確立され、消費者にも一頭一頭の生まれや抗生物質、飼料などの生育情報を届けられる体制があることも、下仁田ミートの大きな自慢です。これは、日米貿易協定など相次ぐ貿易自由化のなかで、消費者に高品質で安全な豚肉の生産過程を知ってもらい、買い支えてもらう上でも重要だからです。

農家5人の共同経営が出発点
社員自ら株主になり、運営に参加

 大もうけより地域に貢献したい

 しかし高品質や安全は、こだわればこだわるほどコストも手間もかかり、もうけ最優先とは相いれません。「それでもこれが従業員の総意なんです。うちは企業というより協同組合に近い組織で、3年目以上の社員はみな株主となり、大事な意思決定や役員人事は株主総会で、みんなで話し合って決めます。お給料が従業員みんなに順当に出ることが大事で、それ以上に大もうけする必要もない。大もうけより高品質・安全が大切というのも、こういう従業員が主体的に運営に関わるという働き方の中でつくられてきた総意なんです」と言うのは、下仁田ミート取締役会長で、群馬農民連副会長の上原正さんです。

 下仁田ミートは、まだコンニャクや養蚕が主だった1961年、5人の農村青年が「農業だけで生活できる収入がほしい。将来的には公務員並みの給料や休日がほしい」と願い、共同組合をつくって養豚業に乗り出したのが出発点でした。

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出荷先の要望に応じて肉をカット。高齢になった小売店にも喜ばれている

 その後、安中市と東吾妻町に養豚場を移設・拡大し、カット工場を増設。生協との産直も始まり、現在の株式会社へと変遷を遂げてきました。今は役員・社員合わせて47人、パート46人が働くまでになっていますが、株主は従業員だけという体制は守り続けています。

共同経営で柔軟・多彩に
家族農業を継承・支援

 子ども食堂に無償で豚肉提供

 「家族農業を守っていくにも、一人の力には限界があります。とくに設備投資の大きくなる畜産業は、共同化することでコスト削減が進んだり、先進的な飼養管理ができ、一人一人のお給料や休日も保障できました。それに事業継承も、共同化すればスムーズです」と上原さん。

 従業員の中には農家以外から就職してきた社員もいれば、初代5人の子どもや孫もいます。夫婦で働いている人もいれば、孫世代の中には農業を選ばなかった人も。「共同化すれば、農業との関わり方をさまざまな形で受け入れながら家族農業を守り、地域で事業を継続していくことができます」と上原さんは言います。

 こうした地域全体を考える姿勢は、県内の子ども食堂に無償で豚肉を提供していることにも表れています。今回の受賞理由でも高い評価につながりました。「コスト削減の努力も大切ですが、やはり地域の人と深く結びつき、安全で高品質な豚肉を地産地消で届けることで、地域の養豚業を守っていきたい」――下仁田ミートの奮闘は続いています。

(新聞「農民」2020.2.3付)
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2020年2月

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