「農民」記事データベース20200106-1391-06

国連「家族農業の10年」
2年目

農山漁村支える全ての人を
各地のプラットフォームに
(2/2)

新春対談
家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン 村上真平代表
紀ノ川農業協同組合 宇田篤弘組合長

関連/農山漁村支える全ての人を各地のプラットフォームに(1/2)
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 持続社会を残す本気の努力を

 村上 このままで本当に子や孫に持続可能な社会を残せるのか、本気で自分のこととして考えることが求められています。スウェーデンの環境活動家で16歳のグレタ・トゥンベリさんが「おとなは子どもたちのことを考えていない。このままでいいのか」というメッセージを発信していますが、本当にその通りだと思います。

 今の政府は、1次産業を大切にしようという観点がなく、「成長」という名で環境を壊し、貧富の差をつくってきました。自由貿易協定(FTA)を推進し、輸入農産物があふれ、農業・農村を崩壊に追いやっています。

 そういう点で、「プラットフォーム」は、人間にとって大切な衣食住に関わる人々が、いろいろな活動に参加できる場です。地域のなかで、将来の世代のために何ができるのかを共有しながら、一緒に考え、行動するときです。

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子どもたちとともに写真に収まる村上さん

 夢をかなえる動きが始まる

 宇田 過疎化、高齢化など農村の現場が厳しいのは確かです。昨年8月に、「みんなで描こう地域農業の未来予想図」と題してシンポジウムを開催しました。発言者が現状の苦しさや難しさを訴える一方で、誰ひとり消極的な意見は述べず、それぞれ真剣に「10年後の自分たちの農業についてどうがんばっていくか」を念頭において発言していました。なかでも84歳の男性参加者が「10年後も農業をがんばっていく」と力強く発言していたのが印象的でした。

 また、県内でも高齢化率が高い古座川町では、紀ノ川農協に加盟する「古座川ゆずの里」という事業体の職員、理事、そして紀ノ川農協の職員、和歌山大学の研修生らが町内の約50軒を訪ねて、聞き取り調査を行いました。80歳代のおじいさんから「集落の中心にあるダムの桜が古くなってしまっている。孫子のためにこれをもう1回きれいにしたい」という要望が寄せられました。しかし、今この人たちが桜を植えても恐らく見ることはできないでしょう。たまたまクマノザクラという新品種が学会で発表されて、それを植えたいということで、70代、80代のお年寄りが「空の上から桜を見よう」(笑い)と生き生きと動き始めたところです。

 自分の思いや夢をもち、設計図を描くことで、それを叶えるために行動が始まったのです。

 村上 農村の状況をみれば、確かに八方ふさがりですが、地域で人が生活し、生きていくなかで、マイナス面ばかりが取り上げられたのでは何も始まりません。そういう点で、聞き取り調査は本当に喜ばれるでしょう。真剣になって住民のありのままの声を聞き、とくに若い人たちと話をすれば、「自分もがんばってみよう」と思うはずです。

 宇田 若い人たちも、地域の高齢者と交流することで、「おじいちゃん、おばあちゃんは、かっこいい。何でもできる」と農村を見直すきっかけになっています。一致点と共同を広げて、みんなで共有できるものを見つけていくことが大事ですね。

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紀ノ川農縁隊のみなさんと玉ねぎの収穫。右が宇田さん

 全国組織生かす大奮闘に期待!

 村上 今年は年明けから忙しい日々が続きます。農水省は、5年に一度見直す「食料・農業・農村基本計画」について、いま国民に向けて意見募集を行っています。

 「プラットフォーム・ジャパン」も「家族農業の10年」をもっと農政に反映させようと意見を出すことにしています。そのためのワークショップと記者会見を1月に開きます。みなさんもぜひ農水省に意見を出してください。私たちもみなさんの意見を集約して農水省に提出したいと思います。さらにその意見を「家族農業の10年」の日本での「行動計画」に反映させようと思っています。

 3月には愛農会として、秀明の方々とも協力して、種子の問題を通して持続可能な社会を考える大規模な学習会を開こうと計画しています。

 宇田 「プラットフォーム和歌山」も近畿農政局や県に「10年」の実践を迫っていきたいと思います。地域では担い手の育成と若手のリーダーづくりに力を入れたいと考えています。

 村上 今年は「プラットフォーム・ジャパン」への参加をもっと広げたいと思います。子どもたちの未来のために明るい農山漁村を残そうと願うすべての個人や団体に参加を呼びかけたい。農林漁業に関わる人たち、消費者、研究者など幅広い参加を目指します。

 とくに農業は、日本人すべてにとって大切なものです。「プラットフォーム」を通じて、自分たちの地域や生活を考え、農村現場の思いを伝えることが大事だと思います。

 そうした点で、農民連さんは全国に組織をもっています。各都道府県単位または地域ごとの「プラットフォーム」づくりに大いに奮闘してほしいと期待しています。

 宇田 ともにがんばりましょう。

(新聞「農民」2020.1.6付)
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2020年1月

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