農民連結成30周年記念
コンクール入選作品
俳句の部
選者 丸山美沙夫(本紙「農のこころ」選者)
〈入選一位〉
産牛の一声に覚む冬オリオン
住谷 菊代(群馬県高崎市)
(選評)畜産農家が飼育している牛が、産み月を控えて気がかりである。「一声」に飛び出して行く牛舎。厳しい寒さだが、無事に生まれるか、見届けるまでの世話や動きをその一瞬に込めた。情感の引き締まる星空の輝きも見事に。
〈入選二位〉
朝市は新米の飯(めし)山盛りに
鈴木 武甫(埼玉県所沢市)
(選評)生産農家が集まっての朝市は、新鮮な野菜や農産物が並ぶ。傍らに新米の飯が盛られている。来訪者への試食用か、準備する仲間たちの腹ごしらえも用意された。「山盛り」には、持て成しの心が見え、里の風情が温かい。
〈佳作〉
農機械操り稲刈る若夫婦
阿波角整治(奈良県奈良市)
(選評)少子高齢化で、後継者問題も深刻である。その中でこんな若夫婦が大いに期待されよう。いま農家の働き手は高齢者が多い。日頃の田圃の管理や畑仕事の中心は老農たちだ。それに対置した若夫婦の作業詠が感動を呼ぶ。
〈佳作〉
胡瓜苗吾子に諭すやつる誘引
真木 肇(群馬県藤岡市)
(選評)胡瓜苗を植える子育て中のお母さんかと思う。胡瓜苗が蔓を伸ばし、支え棒に「つるあげ」させて育ってゆく様子。幼子に知恵を絞って子に説いている。「つる誘引」は難解な言葉だが、野菜を育てる親子の会話が明るく包む。
(新聞「農民」2019.12.9付)
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