「農民」記事データベース20191202-1387-05

原発なくす全国連絡会が連続学習会

大飯原発差し止め判決

福井地裁元裁判長 樋口英明さん講師に

 原発をなくす全国連絡会は11月12日、第17弾の連続学習会を開催。講師は福井県の大飯原発運転訴訟の差し止め判決を出した福井地裁の元裁判長、樋口英明さんです。「大飯原発差し止め判決から学ぶ」をテーマに行いました。

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講演する樋口さん


原発の危険性は迷いようがない

住宅より低い原発の耐震基準

 差し止め決めたそのわけは?

 樋口さんは原発運転差し止め訴訟について「判決によらず裁判官が取材に応じるまれなケース。国の一大事という認識があるからでは」と話します。

 「3・11以降、差し止め判決を出したのは私ともう一人。あとの18人はすべて却下しました。しかし2対18だろうが1対100であろうが私は迷わず差し止め判決を出します。原発の危険性は迷いようがない」としながら、「差し止めを認めなかった裁判官も別に忖度(そんたく)したわけではない」と言う樋口さん。「18人は危険性が理解できなかったということです」

 原発の危険性とは

 原発には地震がおきたときに守らなければいけない3原則があります。止める・冷やす・閉じ込める、です。一つでも失敗すると大事故につながります

 「福島第2原発の時は4号機の冷却水が抜かれておらず、2号機の格納容器のもろいところから穴が開いて、中の圧力が下がるなど、いくつもの奇跡が重なりました。その奇跡がなければ250キロメートル圏内に避難勧告が出ていたでしょう。悪いことが重なれば日本の歴史は終わっていたかもしれません」と3原則が地震の前では守れなかった現状を指摘します。

 「被害の大きなものほど反比例で事故の確率が小さくなっています。しかし原発は唯一の例外で、被害の大きさに対して事故の確率が高すぎます」

 事故の起きやすさどう判断したか

 地震の揺れの強さを表す単位に「ガル」があります。表に示したように2000年以降の観測データで1000ガル以上は17回、700ガル以上は30回発生しています。「表中の5115ガルは三井ホームの耐震基準、3406ガルは住友林業の耐震基準です。一方、大飯原発の耐震基準は建設当時で405ガル、3・11当時で700ガルです」と指摘。「ハウスメーカーの住宅より耐震基準が低いのが原発です。中央構造線が動くような大地震ではなく、普通の地震で事故の可能性が危ぐされます。動かすべきではありません」と差し止めの理由を語ります。

 相次ぐ訴訟の敗因どこにあるのか

 樋口さんは「裁判官は原発のことはわからない。自分も訴訟までよく知らなかった」と言います。「よく知らない裁判官にわかりやすく立証することが必要です」

 被告側は「強振動予測」と呼ばれる理論で「基準値以上の地震は来ない」と主張してきます。「そもそも長期の地震予測は観察も実験もできず、資料もない状態でシミュレーションにより行われており、信頼性のまだ高くない理論です。その土俵の上でたたかってしまえば、裁判官は一定の理論に基づいており、専門家の支持がある被告の言い分を採用しやすくなります」と内情を話し、「原発の危険性を、シンプルに反論の余地なく主張することが必要です」と述べました。

(新聞「農民」2019.12.2付)
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2019年12月

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