「農民」記事データベース20191202-1387-02

〈声明〉

日米貿易協定の衆議院通過に抗議し、
参議院での廃案をめざすたたかいをよびかける

2019年11月20日 農民運動全国連合会


 11月19日、日米貿易協定の承認案が衆議院本会議で自民、公明、維新、希望の賛成多数で採択された。TPP(環太平洋連携協定)では特別委員会を設け、不十分ながらも70時間以上の審議を行い、TPP11でも20時間以上審議したが、今回はわずか9時間(空まわし除く)の審議にとどまった。さらに野党の要求した8つの資料の提出は一切ないまま審議を終結し、採択を強行したことは重大である。

 農民連は、日本の農業と国民生活に重大な影響を及ぼす日米貿易協定を、まともな審議も尽くさないまま強行した安倍政権と与党、これに手を貸した維新、希望の各党に断固抗議する。

 わずかな審議の中でも、協定の片務的で屈辱的な内容が浮き彫りになった。

 安倍首相は、「自動車、自動車部品の関税撤廃を約束させた」と強弁するが、該当する付属書では「関税の撤廃に関してさらに交渉」との表現になっている。にもかかわらず影響評価には自動車および部品の関税撤廃を前提にした試算となっている。さらに「アメリカの関税撤廃率92%」も、自動車関税撤廃を前提にしており、明らかにWTO(世界貿易機関)違反である。協定にないものをあたかも合意しているかのようなウソで塗り固めた協定は、前代未聞であり、協定に値しない。

 また、協定文4条には「安全保障上の重大な利益の保護のために必要な措置を適用することを妨げてはならない」とされており、いつ追加関税をされても仕方がない内容となっていることも重大である。

 さらに、農産物では譲歩に次ぐ譲歩の規定が盛り込まれている。付属書Tには「アメリカ合衆国は、将来の交渉において農産品に関する特恵的な待遇を追求する」としており、今後も更なる関税撤廃めざし交渉すると宣言している。

 また緊急輸入制限(セーフガード)については、セーフガード措置がとられた場合は「一層高いものにするため協議する」とされており、牛肉については発効後10日以内に協議を開始し、90日以内に結論を出すと規定されている。江藤農水大臣がいくら発動水準を前年度実績より低く抑えたと自慢しても何の意味もないといわざるをえない。

 政府は10月15日に閣議決定し、10月末には衆院通過という最悪のシナリオを描いていたが、結束した野党の奮闘と院外のたたかい、相次ぐ大臣の辞任という事態のなかで11月19日まで衆院通過がずれ込み、会期末(12月9日)までの自然成立はできなくなったことはたたかいの大きな成果である。

 いま安倍政権は国民世論に追い詰められ、政権発足以来の危機的状況に陥っている。「桜を見る会」に安倍首相の後援会員を850名も招待し、公的行事を私物化していたことは、「前夜祭」をめぐる問題と合わせて、公職選挙法と政治資金規正法に抵触するものであり、安倍首相の進退に関わる大問題である。野党は結束して予算委員会での真相究明を要求しており、今後の国会審議の行方は不透明となっている。

 日米貿易協定承認案は舞台が参議院に移されたが、今後のたたかいで廃案に追い込む可能性がある。日米貿易協定の廃案は、次のステップである日米FTA(自由貿易協定)阻止に直結する。

 「桜を見る会」の真相究明と「安倍首相の退陣」を求める国会内外の運動と結んで、「日米貿易協定を批准するな」の世論と行動をさらに広げ、廃案に追い込むために全力を尽くすものである。

(新聞「農民」2019.12.2付)
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2019年12月

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