農家の税金対策
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消費税増税
免税事業者にも大打撃
10月から消費税が増税され、「軽減税率」も導入されました。免税事業者にとってはどんな影響があるのでしょうか。
経費にかかる増税負担
消費税を申告する場合には、売り上げにかかった消費税から経費にかかった消費税を控除(仕入税額控除といいます)した残額を申告し納税します。
免税事業者は仕入税額控除をしないので、経費にかかった消費税をそのまま負担することになります。経費にかかる消費税はほとんど10%が適用されていますので、多額の負担増になります。
委託販売手数料が引けない
委託販売手数料を控除した残額を売上金額とすることができる通達(消費税法基本通達 10―1―12(1))がありますが、軽減税率取扱通達16は、軽減税率の適用対象となる食品等については、売り上げにかかる税率と手数料にかかる税率が異なることから、10月1日以降、この基本通達の適用はできないとしています。
免税から課税に
売上金額の3割前後にも及ぶ委託販売手数料が控除できなくなることによって、これまで課税売上高が1千万円以下であった農家のうち、少なくない農家が課税事業者となり、消費税の申告納税義務を負うことになります。また、簡易課税を選択している農家にとっては、納付税額が増えることになります。
区分記載請求書の発行
免税事業者であっても、区分記載請求書等の発行を求められることがあります。課税事業者が仕入税額控除をする場合には区分記載請求書等の保存が必要なためです。区分記載請求書等とは、軽減税率を適用する品目を明示して、税率ごとの税込合計金額を記載した請求書や領収書です。軽減税率用の請求書と標準税率用の請求書を分けて、軽減税率適用の請求書にはその旨を記載するなどして対応しましょう。
4年後のインボイス導入を止めよう
2023年10月から適格請求書(インボイス)等保存方式が導入されると、原則としてインボイスがなければ仕入税額控除ができなくなります(6年間の経過措置あり)。
インボイスは登録した課税事業者でなければ発行できません。課税事業者にとっては仕入税額控除ができないと困るので、免税事業者は取引から排除される恐れがあります。課税売上高が1千万円を超えなくても自ら課税事業者になって消費税の申告納税をせざるをえない農家が続出することになります。
免税制度は必要
免税事業者が消費税の申告納税をしないことを「益税」という人がいますが、実態に合わない議論です。消費税分を価格に上乗せできるのは、売り手側が優位にある場合です。直売所などで自由に価格が決められるとしても、値上げして同じように売れるかは別問題です。取引上優位に立つことが難しい小規模事業者の免税は必要です。
消費税の減税・廃止を
消費税は所得の低い人ほど負担率が高い悪税です。2014年に5%から8%に増税したときに落ち込んだ家計消費は、増税前に比べていまだに20万円以上も落ち込んだままです。
格差と貧困を広げ、景気を冷やし、営農を壊す消費税は減税、廃止させましょう。
(新聞「農民」2019.11.25付)
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