「農民」記事データベース20191104-1383-15

命をめぐる収穫祭

静岡県藤枝市 杵塚 歩


稲 私たち 生き物たち
“食べる”を通じて、“命のつながり”感じよう

 今年も10月6日に「命をめぐる収穫祭」が静岡県藤枝市で行われ、60人を超える方々(約半数は子どもたち)が、県内外から参加してくれました。

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ごちそうが並んだ昼食

 田植えから4カ月、6月にはまだ小さな稚苗だった稲は重そうに稲穂を垂れ、手のひらにチョコンと乗るほど小さかった合鴨のヒナたちは稲と共に大きく成長し、その変化に訪れた人々は皆目を丸くしていました。

 鎌を持ち、稲株をもう片方の手でしっかり握ってザックリと刈り取る、それを藁(わら)で束ねて、稲架に掛けるという作業のなかで、様々な生き物に遭遇します。稲穂が出る直前に田んぼから引き上げたはずの合鴨が3羽、田んぼの中に隠れていたのを参加者の一人が川まで追って入り、そのうち2羽を捕まえたり、突然マムシが出てきて驚いたり、稲にしがみ付く名前も知らない虫は何をしているのか、皆で話し合ったりと稲刈りは「稲」「私たち」「生き物たち」という3者を結んでいたように思います。

 マムシは怖いけれど、なぜ田んぼにいるのか…。蛇はカエルなどを食べ、カエルは小さな虫を食べ、小さな虫は稲を食べ、稲は合鴨の糞で大きく育ち、私たちの食卓に新米として上がる。農薬を使わないということは、ただ単に人間の健康に良いなどそんな単純なことではなく、様々な生き物が生きる場所を守り、生き物間の命の関係を可視化してくれます。

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稲刈り中もたくさんの生きものが顔を出す

 田植えの時よりも一回り大きくなった子どもたちが田んぼで何を見つけ、何を感じたのか、彼らが大きくなったら聞いてみたい。他の命を感じること、食べるという行為がそこに結びつく一助となればと願います。

 稲刈り後は収穫を祝い、友人の率いるグループがアフリカン・ダンスを披露してくれました。夕方からあいにくの雨で屋内開催となりましたが、近い距離でみんなが集まり、迫力と熱気がすごかったです。農村にジェンベ(アフリカの太鼓)の音や皆の笑い声がこだました楽しい一日でした。

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ジェンベの調べに乗ったアフリカン・ダンス

 年末には「命めぐる収穫祭」の続編として「合鴨の命をいただくワークショップ」や、田んぼで収穫したもち米で「マイのし餅搗(ま)き会」を計画しています。

(新聞「農民」2019.11.4付)
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2019年11月

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