「農民」記事データベース20191104-1383-06

台風19号
各地の被害

関連/台風被害にビア・カンペシーナの仲間からお見舞い

 大雨で大きな被害を各地にもたらした台風19号。農民連は各被災地に入り、支援と被害状況の把握に努めています。


千曲川の決壊でリンゴの木水没

長野

 10月12日に上陸した台風19号により、千曲川は決壊し、長野市豊野地区の多くの住宅を飲み込むと同時に、リンゴ園にも濁流が流れ込み、災害ゴミが木の上にまで引っかかり、矮(わい)化栽培の木をなぎ倒すなど、甚大な被害がありました。

 10月17日に長野県農民連三役は、急きょ現地調査をすると同時に、三役会議を開催し、対策を相談しました。農民連本部から吉川利明事務局長が参加しました。

 新幹線が4メートルも浸水したという長野新幹線車両センター付近のリンゴ園では、木の上まで浸水し、収穫前のリンゴは水につかり、出荷できない状況となりました。

 近くの農園では台風が来ると聞いて急いで収穫したリンゴもコンテナと一緒に流され、残されていました。

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台風に備えて急ぎ収穫したリンゴもコンテナと一緒に流されました

 新規就農で「新矮化栽培」3年目で今年収穫を始めたばかりの園地も、大きな被害を受けました。矮化栽培のリンゴの木は完全に水没。矮化の木を支えるポールの上まで水につかりました。訪れたときにはコンテナがかかったままになっていました。

 「初めての収穫を終えて、返済がこれからというところで被害にあいました。どうしていいかわからない」と気落ちしています。

 東隣の園地では、濁流に押され支えていたポールが倒れて、リンゴの木が根本から引き抜かれていました。

 また西隣の園地には、コンテナやパレット、わらなどの災害ゴミが幾重にも積み重なってあり、汚水のような悪臭も立ち込めていました。

 帰りの車窓から、垣根の半分以上まで水が使っている様子が分かりました。電柱には、千曲川の堤防上よりマイナス6・4メートルの表示もあり、一時期駐車場の屋根まで水が来たといいます。住宅地での被害も甚大で、床上浸水も多数にのぼりました。


保管の米全量廃棄施設修理に数百万

埼玉

 18日には農民連ふるさとネットワークの湯川喜朗事務局長が埼玉県坂戸市の原秀夫さん(埼玉県農民連副会長)を訪問しました。

 原さんが息子さんと経営している(米40ヘクタール・小麦70ヘクタール)ライスセンターが越辺川の決壊氾濫により、ライスセンターが高さ2メートルまで浸水。保管中の米(フレコン30本・約3トン分)は全量廃棄(焼却場で特別に受け入れ)を余儀なくされました。

 コンバイン、トラクター、ユンボ、トレーラーとともに乾燥調製施設が浸水。共済に加入しているトラクター等は現在メーカーで調査中です。

 「20年前の水害以上の大水害で被害も前回以上だ。11月10日ころには麦まきをしたいので、トラクターは大至急修理したい。コンピューター部分以外は部品調達して自分で直すが、施設の修理には保険があっても、数百万円はかかるのではないか」

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トレーラーが水に流されて激突し、壁に穴があいています

 聞き取り中に、埼玉県川越農林振興センター所長が来訪。「全体の被害状況も調査中ですが、現在農業機械の被害状況を特に調査するよう指示が出ています」とのことでした。

 埼玉県には「農業災害特別救済条例」があり、県が特別の対策も検討している可能性もあり、県議を通じて対策を充実させていく要求運動がさらに求められます。


イチゴハウス濁流で倒壊

栃木

 17日午後、農民連本部の藤原麻子事務局次長と栃木農民連の野村和史事務局長は鹿沼市の農民連会員2人を訪問。お見舞いととともに要望などを聞きながら、農水省の支援対策パンフを参考資料として手渡しました。

 鹿沼市で米とイチゴを作っている大越まさひろさんは、居宅が床上80センチ、作業場・納屋・倉庫も150センチのところまで浸水。連棟ハウス(400坪、イチゴ苗8000本)と単棟ハウス400坪(8000本)が濁流により倒壊しました。もう1棟の連棟ハウスも浸水、8000本のイチゴの苗は土砂の土が乾き、白くなったままです。

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濁流に押しつぶされた大越さんのハウス

 家族と近所の方、栃木市の農民連会員・知人たちが駆けつけ、浸水した家具の搬出など後片付けと日常生活を取り戻す作業に追われていました。倉庫で浸水した玄米4500キログラムは、堆肥原料にされます。

 11月には、来年作付け用のイチゴの親株も納入予定ですが、「今の段階では片付けに手がとられてしまい、無事だったイチゴの手入れはどうなるか」と大越さんの息子さんは話しています。

 鹿沼市で米とコンニャクなどを作っている岩出正行さんは、隣接していた川の堤防が決壊。居宅、作業場、田んぼに土砂、流木が流入し、「田んぼが河原状態になった」と岩出さん。倉庫に積んであった新米30キログラム袋の1段目は完全浸水し、1500キログラムを廃棄しました。

 岩出さんは「激甚災害指定で9割補助があっても、100万円を負担して田んぼを直すのか・・・と思うと、田んぼを借りている人はもうこれでやめようとなると思います。今回決壊した川の対岸も、以前は田んぼがあったが、30年前に橋が壊れて放棄地になってしまい、原生林状態です」と懸念します。

 岩出さんたちは11月3日に直売所で「新そば祭り」を行います。「生産者の中で一番被害があるがこういう時だからお祭りをやって地域を盛り上げていきたい」と岩出さんは考えています。


台風被害にビア・カンペシーナの
仲間からお見舞い

韓国、インドネシア、カナダからも

 台風19号が日本各地に甚大な被害をもたらしたことについて、ビア・カンペシーナの仲間からもお見舞いのメッセージが寄せられています。

 国際農民組織ビア・カンペシーナの役員に当たる国際調整委員のキム・ジョンヨルさん(韓国女性農民会)は、「台風ハビギス(台風19号)が日本にもたらした被害について非常に心配している」と述べ、日本の農民や農民連の仲間の安否を気遣いました。

 同じく国際調整委員のザイナル・アリフィン・フアトさん(インドネシア農民組合)からも、台風被害の大きさへの懸念が伝えられました。

 カナダのケベック農民組合のカレン・ロスチャイルドさんからは、北アメリカ地域(カナダ、アメリカ、メキシコ)の仲間への情報発信など、可能な支援を行う用意があるとの申し出がありました。

 メッセージは電子メールを通じて農民連本部に届けられました。

(新聞「農民」2019.11.4付)
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2019年11月

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