豚コレラ
10県でワクチン接種へ
10月中にも開始
希望県全てに接種を認めよ
農民連関東ブロック 農水省に要請
農水省は10月15日、豚コレラの新たな防疫指針を施行しました。新指針には、飼養豚への予防的なワクチン接種(※感染していない豚にワクチンを接種して免疫を付け、殺処分にしない)を認めることや、全国の養豚場に防護柵の設置を義務付け、野生イノシシとの接触を防ぐようにする、などの内容が盛り込まれています。
ワクチン接種の推奨地域は現在、野生イノシシに豚コレラ感染が広がっている10県を指定。各県で実際の接種地域や必要ワクチン数などの接種プログラムを作成し、農水省との協議の上、10月中には接種が開始されることになります。また防護柵の設置費用は国が半額を、県が4分の1を負担し、さらに県や市町村で上乗せ助成する動きも広がっています。
一刻も早く接種開始を
こうしたなか、農民連関東ブロック協議会は10月10日、農水省に要請を行い、一日も早いワクチン接種の実施や、防護柵の設置費用を全額公費で負担することなどを求めました。
要請で、群馬農民連副会長で養豚農家の上原正さんは、「うちでも発生するのではと、不安と緊張で従業員一同、ピリピリした毎日を送っている。一刻も早くワクチン接種を」と要望。また群馬県では柵の設置費用を県が上乗せで半額負担し、生産者負担はなしとなったことを紹介し、「これは助かった。しかし業者が少なく、見積もりを3社からもらう規定が大きな支障になっているので見直してほしい。また資材が品薄で、設置が遅れている間に感染イノシシが来てしまう」と現状を話し、農水省も「その実態は関係部署に伝えたい」と応じました。
このほか、今回10県とされたワクチン接種の地域指定について、参加者は「接種を希望する県はすべて指定を」と求めました。しかし農水省は、「野生イノシシでの感染が確認された県に限定すべき」と回答。参加者から、「イノシシの感染が見つかっていない県は、捕獲数や調査数が少ないからではないか。イノシシの感染を基準とする硬直的な対応は再考してほしい」との声が重ねてあがりました。
ワクチンの備蓄数を心配する声も上がりましたが、農水省は「国内メーカーでの増産と合わせて650万回分は年内に準備できそう。関東全県で接種するとしても不足しない」と回答しました。
埼玉農民連 県に要請
防護柵の設置費用
生産者負担なくせ
豚コレラの問題では、埼玉農民連も10月15日、県に緊急要請を行い、農林部副部長が対応しました。埼玉県でも3件もの養豚場で豚コレラが発生しているほか、野生イノシシでの感染も続々と見つかっています。
この要請には、近隣の養豚場で豚コレラが発生し、その防疫措置で出荷停止になっている美里町の養豚農家の白石光江さんも参加。「幸い、わが家では豚コレラは発生していないが、元気のない豚がいたらどうしようと毎朝、怖い思いで豚舎に行っている」と切々と語り、一日も早いワクチン接種と、出荷停止や殺処分となった養豚農家への支援の拡充を求めました。
県も「接種プログラムも準備しており、一刻も早く接種できるようにしたい」と述べ、接種に当たる人員の確保や、発生農家への補償価格や相談窓口、防護柵の設置費用の助成など、具体的な意見交換が行われました。
(新聞「農民」2019.10.28付)
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