「農民」記事データベース20191021-1381-02

追求 日米貿易協定

“日本の豚コレラは
絶好のチャンス”

アメリカ養豚団体会長が暴言


黙って聞いていた安倍首相

 首脳会談という公の場にカウボーイハットをかぶったアメリカの農業団体代表を同席させ、「みんなうれしいだろう。巨額のカネが入ってくる」「米国の農家にとって巨大な勝利だ」と勝ち誇ったトランプ大統領。「来年の大統領選に向けたセレモニー」(北海道新聞)の様子を、ホワイトハウスが全文公開して大宣伝しています。

 日本の交渉関係者は「事前に知らされておらず、まるでやらせだ」と不満をもらしましたが、トランプ大統領も農業団体代表も、そんなことはおかまいなし。

 「私たちのために立ち上がってくれたことに感謝します」などとトランプ賞賛の声が相次ぐ中、特異な政治力を誇る「全米豚肉生産者協議会」(NPPC)のデイブ・ハリントン会長は、次のように言ってのけました。

 「日本は、常に、我々にとって最大の価値ある市場であり、最良の顧客である。大統領、今日、日本にまん延している豚コレラのため、豚肉の供給が不足している。これは絶好のチャンスだ」

 豚コレラが広がり、深刻な危機におちいっている日本の養豚の不幸につけ込み、「これは絶好のチャンスだ」とわめきたてるアメリカの養豚業界。これを止めるどころか、あおりたてるトランプ大統領。

 「アメリカファースト」「大統領選ファースト」を象徴しています。

 さらにおぞましく情けないのは、安倍首相が、こんな人でなしの言動に抗議も異議もはさまず、黙って聞いていたことです。「豚コレラ対策に政府の総力をあげる」という言明は口先だけのものだと言わざるをえません。

 「今だけ票だけ自分だけ」の「大統領選ファースト」はエスカレート。トランプ氏は9月25日に続いて、10月7日の署名式にも同席させました。


日本農業新聞モニター調査

日米貿易協定
農業関係者 怒りと不安

「日本に有利」わずか1%
「情報開示は不十分」82%
「日本に悪影響」と不安79%

 農業関係者の3人に2人が日米貿易協定は「アメリカ有利」の協定と考え、82%が「情報開示は不十分」、79%が「悪影響が強まる」と評価していることが、10月4日公表の日本農業新聞農政モニター調査から明らかになりました。

 安倍首相は「日米ウイン・ウインの協定だ」と言い張っていますが、モニター調査によると「日米双方に利益」と評価している人はわずか8%、「日本に有利」と答えたのは1・1%にすぎません。徹底した秘密主義により、まともな情報開示が行われていないため、「分からない」が25%にのぼっています。この調査では異例の多さです。

 「農業者、消費者、国民にとって将来の利益となる協定だ」――安倍首相は日米首脳会談直後に、こんなウソ会見を恥ずかしげもなく行いました。

 しかし、TPP(環太平洋連携協定)11、日欧EPA(経済連携協定)に続く日米貿易協定によって、「悪影響が強まる」と不安を訴える人は79%に達しています。

 全中会長は「農業者の不安を受け止め、粘り強く交渉」してきた政府・与党の「ご尽力に心より敬意」を表したうえで、これで「生産現場は安心できる」という談話を公表しました。これは、圧倒的に多くの農業関係者の怒りと不安にそむくものと言わざるをえません。

(新聞「農民」2019.10.21付)
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2019年10月

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