「農民」記事データベース20190923-1377-09

台風21号被害から1年
農業は再建途上

大阪 阪南支部協議会

 昨年の台風21号は、大阪府の泉州地域を中心に甚大な被害をもたらしました。農業用ハウスなど都市農業の担い手、新規就農者が大打撃を受けました。
 農民組合大阪府連合会(大阪農民連、田中豊会長)は「農業のある都市づくり」をめざす「都市農業振興基本法」(2015年4月)を力に、国会議員・地方議員の協力を得て、地元自治体、農水省に緊急支援を求めて「国と自治体で最大9割を負担する」支援事業を大都市圏で初めて実現させました。被災農家、地元自治体と共同して、農業用ハウスや玉ねぎ小屋の再建と復旧に取り組んでいます。


=農業用ハウスを再建=
被災農家を大きく励ました支援事業

 ハウスの9割被害

 泉州水ナスの産地、泉佐野市は約9割の農業用ハウスが倒半壊の被害を受けました。

画像
農業用倉庫を再建した中野善弘さん(阪南市)

 3反(3000平方メートル)余りの農業用ハウスで水ナス、春菊などを栽培する専業農家の新悟さん(49)は、「台風被害を受けたときは、自力で再建は無理、露地栽培に切り替えようと縮小する方向で考えたが、今回の被災農業者向け経営体育成支援事業(最大9割を国と自治体が補助する)で、ハウスの再建を決断し、新しいスタートに立つことができた」と話します。

画像
再建された農業用ハウス(泉佐野市)

 一方、「高齢で10年続けるという約束はできない、と再建をあきらめた被災農家もいる。その方も含めて、農業の再建・復興をどう進めていくのかは引き続き大きな課題だ」と指摘しています。

 泉南市では、「農業用ハウスの施工業者が人手がなく手が回らない」と、「いまだに約4割以上が再建できないでいる」と報告されています。

 農業用ハウス5棟を再建した泉佐野市の組合員は、市に申請して「検査に行く」といいながら放置されています。融資返済も迫られているのに、「補助金がいつ下りるのかもわからない」と不安を募らせています。

被災農家に寄り添って
迅速な対応を府に求める

 大阪農民連と大阪府との交渉(8月29日)のなかで、大阪府の農政室長が「先のサミットで泉州の水ナス、泉州玉ねぎが食事に出された」と紹介されました。

 しかし、その泉州玉ねぎも市場では分家の「淡路玉ねぎ」にとって代わられています。玉ねぎのおいしさを引き出し、長く出荷できるように保存できるのが「玉ねぎ小屋」です。

 泉南市では台風で55棟が倒壊しました。大阪府は当初、「玉ねぎ小屋の再建も支援する」と約束していたのに、昨年11月の万博誘致決定から突然「玉ねぎ小屋も建築確認がいる。建築確認を受けていない玉ねぎ小屋は違法建築だから支援できない」などと言い出しました。被災農家はもちろん、当該自治体も困惑・混乱しました。

 私たちは、農民連本部を通じて、日本共産党国会議員団の協力のもと農水省から「違法かどうかは大阪府の裁量の範囲」という回答を引き出し、大阪府に迫るなかで今年2月に「建築確認はいらない」と大阪府が回答しました。泉南市では被災した約6割の玉ねぎ小屋がすでに再建されてきています。ところが隣の泉佐野市は、7月に「被災玉ねぎ小屋の撤去を支援する」と指示してきています。

画像
再建された玉ねぎ小屋(泉南市)

 国が進める支援事業でありながら、各自治体の対応がバラバラになって再建が遅れています。その責任は主に大阪府にあり、8月29日の大阪府との交渉のなかでも、その責任を指摘し、農業再建を迅速に進めることを強く要望しました。

(農民組合大阪府連合会阪南支部協議会 下村晴道)

(新聞「農民」2019.9.23付)
ライン

2019年9月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2019, 農民運動全国連合会