「農民」記事データベース20190916-1376-13

平和資料館がオープン

矢臼別演習場を平和な土地に

北海道 釧根農民組合協議会 森高哲夫さん


反戦地主 川瀬さんの思い引き継ぎ

 北海道東部、別海町、厚岸町、浜中町にまたがる矢臼別(やうすべつ)演習場は、戦前にあっては陸軍の軍馬補充部が使用していた土地です。戦後は食料供給基地として約60戸の方々が開拓入植しました。ところが1961年、この土地を自衛隊演習場にする計画が持ち上がり、せっかく入植した農民を追い出して1964年には演習場として使用するようになりました。

 3千万円超の寄付金で建設

 このなかで2戸の農民が国の農地買収に応じず、「自衛隊は憲法違反、私はここに居たいのです」として、開拓農民としての生活をつづけました。すでに亡くなった杉野芳夫さん、川瀬氾二さん(別海西春別農民組合元書記長)一家です。

 根室・釧路の農民、労働者はこの2戸を守るべくたたかいにたち上がり、全国からも大きな支援を受け、土地は守られました。現在、川瀬さんの約31ヘクタールの土地は、一般社団法人「ピース矢臼別」の所有地として登記されています。演習場に取り囲まれて55年、集団所有にして土地を守るかたちはできました。

 川瀬氾二さんは生前、「この土地を多くの人が集まるような平和公園にしたい」と言っていました。その川瀬さんの思いを受け継ぎ、3年前から「平和資料館建設委員会」をたち上げ、準備を進めてきました。建設費は寄付を呼びかけ、道内外の個人・団体からのべ716件、目標の3500万円のうち現在までに3060万円が集まり、今年6月、オープンの運びとなりました。

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平和資料館の外観

 展示物は、陸軍の「軍馬補充部」の様子を伝える写真や資料から始まり、演習場誘致が決まって以降の学生・労働者による「援農隊」の写真や、1965年から始まって今年で55回目を迎えた「平和盆おどり大会」など、多くの写真が展示されています。

 展示室となりの資料室には、資料館建設の発案者でもあり矢臼別のたたかいに深くかかわった、北海道教育大釧路校の三宅信一元教授(93)の収集した新聞記事や図書など、平和運動の膨大な資料も保管しており、閲覧することもできます。

 違憲の戦争訓練は現在も進行中

 現在(8月26日〜9月23日)矢臼別演習場では、陸上自衛隊と米陸軍との実動訓練「オリエント・シールド19」が実施されています。1997年から始まった、米海兵隊による155ミリ榴(りゅう)弾砲の矢臼別での移転訓練は、10月に18回目が予定されています。さらに来年1〜3月の日米共同訓練ではオスプレイの飛行訓練も計画されていています。安保法制強行採決後、違憲の戦争訓練は目にあまります。

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昨年8月に行われたアメリカ海兵隊の砲撃訓練

 川瀬牧場内に住む彫刻家の二部黎(にべれい)さんは、「一人でも多くの人に矢臼別の平和運動を知ってほしい」と言い、「平和資料館ができてからたびたび研究者が訪れるようになった。砲弾の音が聞こえるこの場所に建った資料館は、平和について深く考えるには絶好の場所だ」と言います。また、年老いた来館者のなかには、20代の若き自分の写真を見つけて懐かしんでいる様子を目の当たりにして感激したそうです。

 矢臼別の住人となって31年、資料館館長の浦舟三郎さんは「最近、川瀬宅の2階から古い写真が見つかった。まだまだ眠っているものがある。これからも資料館を充実させていきたい」と話しています。

矢臼別平和資料館

 ▼住所 北海道野付郡別海町矢臼別41−2 電話 0153(77)2120
 ▼開館時間 土、日曜、祝日の午前10時〜午後5時まで。5月から10月末まで(冬期間は休館)、これ以外の日時を希望する場合は応相談
 ▼入館無料

(新聞「農民」2019.9.16付)
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2019年9月

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