「農民」記事データベース20190916-1376-01

九州北部大雨

農地に油流出、復旧を困難に


水田も機械も水没 この先どうしたら…

 8月末に佐賀県を中心に九州北部を襲った記録的大雨から1週間余がたちました。浸水被害の大きかった佐賀県杵島郡大町町(おおまちちょう)に、農民連本部の藤原麻子事務局次長、九州ブロック担当の来住誠太郎常任委員、福岡、佐賀両県の農民連会員らが現地調査に入りました。

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油が付き変色した稲の穂先。水面にはまだ油が…

 炭鉱地帯で、かつては石炭鉱山があった大町町では、大雨でボタ山(石炭の精錬後に残った捨て石の山)が崩壊し、水田には鉄工所から流出した重油が流れ込み、あちこちに黒ずんだ油が残っています。

 被害の大きかった順天堂病院は、他の住宅から比較的孤立した場所にあり、水田よりもやや高台に建っていますが、玄関口まで水が迫り、被災時は孤立。患者は上階に避難したと言います。

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水がひいて、芝に縞模様に残った油

 病院の周囲に広がる水田や農家の住宅、倉庫もみな冠水。順天堂病院からほど近い場所で米や大豆、施設野菜をつくる42歳の若い農家では、1・7ヘクタールの水田と大豆畑が冠水したほか、「倉庫内の農機具や乾燥機、冷蔵庫などもダメになった。この先どうしたらいいのか…」と、頭を抱えていました。

 ほかに、鶏舎が水没し、下段にいたニワトリが水死した被害や、太陽光発電のパネルが水没している様子も確認されました。

 この地域を流れる六角川はノリの養殖で有名な有明海に注ぐため、あふれた水はノリ養殖に影響が出ないよう、吸収シートで油を吸い取ってから川に放水する必要があります。現在、自衛隊などによる油の除去作業が続いていますが、除去シートが足りないなど難航しています。地域の農家は「水が引いても、水田には油が残る。今年だけでなく、今後どれだけ被害が長引くか心配だ」と、不安を口にしていました。

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被災した若い農家から話を聞く一行

 農水省によると、大町町での浸水・冠水による水田被害は5018ヘクタール、大豆被害は2650ヘクタール。共済などの補償対象となる見込みですが、国は激甚災害指定については「(油流出は)特殊要件だ」として、さらに検討するとしています。

(佐賀県農民連事務局長 平林正勝)

(新聞「農民」2019.9.16付)
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2019年9月

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