家族農業守ろう 日米FTAストップ
日本母親大会in静岡
全体会でアピール
子どもたちに明るい未来を
第65回日本母親大会が8月24、25の両日、全国からのべ9000人の女性たちが集い、開催されました。今年の開催地は、母親大会の原点の地、静岡県。日本母親大会は、1954年3月、アメリカによるビキニ環礁での水爆実験で第五福竜丸が死の灰を浴びたことを機に、「核戦争から子どもたちを守ろう」という母親たちの熱い思いから始まりました。今年も「子どもたちに明るい未来を手渡そう」と、さまざまな課題で熱い交流が繰り広げられました。
食料関連分科会が満員の大盛況
1日目は分科会が行われ、35の分科会や特別企画が行われました。
今年はとくに遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンの代表の天笠啓祐さんを助言者に迎えた「日本の食を考える」分科会や、アジア太平洋資料センターの内田聖子さんを招いた「SDGsをどう生かす」分科会など、食料や農業に関連した分科会が3つも開催され、どれも満員の大盛況となりました。
「地域を農業・林業・漁業の力でよみがえらせよう〜『家族農業の10年』スタートの年にあたって」の分科会では、愛知学院大学准教授の関根佳恵さん、静岡のお茶農家で農民連青年部元部長の杵塚歩さん、静岡県の林業家の難波清芽さん、全国沿岸漁民連事務局長の二平章さんを助言者に迎え、討論しました。
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「家族農業の10年」の分科会 |
家族農業の支援に世界は大転換
杵塚さんは、農業と食糧をめぐって多国籍アグリビジネスの支配が進んでいる現状に触れ、家族農業だからこそできる、自らの有機農業と農家の暮らしを紹介。乾燥地帯の内モンゴル産の有機大豆で作ったみそがスーパーで市販されている実例を挙げながら、「食、農、暮らしを自らの手に取り戻そう」と、呼びかけました。
難波さんは、杉やヒノキの木の皮をむいてゆっくり立ち枯れさせ、1年後に乾燥した状態で伐採する「皮むき間伐」と呼ぶ方法で間伐をすることで、人工林を再生する活動を紹介。日本が熱帯林を破壊する木材の輸入大国となっている一方で、国内では植林が荒廃し、土砂災害が頻発している実態に、警鐘を鳴らしました。
二平さんは、家族経営の沿岸小型漁業者が圧倒的多数を占める日本漁業の実態をわかりやすく紹介。安倍政権が、水産資源を企業資本に開放し、家族漁業を破壊する水産改革を推進しており、沿岸漁民も漁民連を結成し、たたかいが大きく広がっていることを報告しました。
最後に、関根さんが国連「家族農業の10年」について報告。2008年の食料危機を契機に、家族農業を再評価し、支援する方向へと世界は大転換していること、日本でも家族農業を農業・食料政策の中心に位置づけることが求められていることが強調され、「持続可能な未来に向けて、共同の力で新しい社会をつくっていこう」と呼びかけました。
貿易自由化許さず後継者守ろう
討論では、地域の農林水産業に後継者がいないことを危惧する意見が数多く出され、杵塚さんは「生産者同士や生産者と消費者のつながり、仲間づくりが、もの作りを続けていく上で重要だと思う」と発言。
千葉県農民連会員の飯島和子さんは、「都市近郊の野菜産地で米作りしている。わが家で農業機械を所有し、米の乾燥調整や作業受託などを請け負ってきたが、最近になって若い生産者が出てきた。こういう共同の仲間がいれば、地域で農業を続けていく力になる」と述べ、会場から大きな拍手がわきました。
関根さんは、「TPP(環太平洋連携協定)などの貿易自由化が日本の家族農業を危機に追い込んできた」と指摘。「農業に就きたくても、実際に農家収入が低い実態もある。農家所得を上げるには輸出や設備投資偏重のスマート農業などではなく、輸入拡大による農産物価格の下落に向き合うべき」と話しました。
(新聞「農民」2019.9.9付)
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