豚コレラ対策
殺処分ではなく
ワクチン接種を早く
すでに13万頭殺処分
感染止まらず非常事態!
豚を死に至らしめる家畜伝染病、豚コレラのまん延が止まりません。
「もう岐阜県内で飼育する半分以上の豚を殺処分した。これでは県の養豚産業は成り立たない。これ以上、1頭の殺処分も出してはならない。一刻も早くワクチン接種を行い、このピンチを救ってほしい」――8月2日、岐阜、愛知など豚コレラのまん延する東海地方の養豚関係者400人が集まり、ワクチン接種を求めた決起集会(名古屋市)で、岐阜県養豚協会の吉野毅会長はこみ上げる涙に言葉を詰まらせながら、こう訴えました。
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まん延防止を求めてこぶしを上げる生産者ら(8月2日、名古屋市) |
豚コレラはこれまでに7府県、38事例72農場で発生が確認され、13万頭が殺処分となっています。7月下旬には三重、福井の養豚場でも発生。8月9日には、防疫を指導する要であり、厳戒態勢を敷いているはずの愛知県農業試験場でも発生しており、まさに“飼養衛生管理だけでは防ぎきれない”ことを行政が証明する事態となっています。
また野生イノシシ間の感染も加速。このペースで拡大していくと、今年末には埼玉、群馬など関東地方にも到達することが懸念されていますが、野生イノシシの感染対策は困難を極めています。
こうした事態に、8月2日の決起集会では、殺処分となった生産者から「感染したイノシシがいる間は新たな豚の導入もできない。ワクチン接種なくして経営再開の目途もたたない」、「早期出荷では生産者は生活できなくなる。ワクチンしかないことは明らか」などの緊迫した声が噴出。会の最後では「と畜場などのインフラも整備されており、域内での流通や消費が可能」として、「中部5県に限定した予防的ワクチン接種」を求める要請書を満場の拍手で採択しています。
日本養豚協会は会員にアンケート調査や署名活動を行い、ワクチン接種を繰り返し政府に要請しているほか、日本養豚開業獣医師会などの養豚関係団体なども要請。7月に開かれた全国知事会でも抜本的な対策を求める緊急提言を採択したほか、岐阜県や石川県の知事が農水大臣にワクチン接種を要請するなど、養豚業界と地域を挙げてワクチン接種を求める意見が広がっています。
こうした動きにも押されて、農水省は重い腰をあげざるを得なくなり、8月に入って予防的ワクチン接種に向けた調査・検討を始めました。
しかし現在の特定家畜伝染病防疫指針では殺処分を前提としない予防的なワクチン接種を認めていないことや、豚肉の分離流通・消費の方法など、ワクチン接種の実施に向けて課題が多いのも事実です。
こうした事態を招いた政府の責任は重大です。非常事態の今、豚コレラを封じ込むために、政府は従来の枠組みにとらわれない、迅速で抜本的な対策が求められています。
(新聞「農民」2019.8.26付)
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