日米貿易交渉
重大局面
「負け犬外交」をやめよ
農産物を犠牲、自動車でも
アメリカに押されっぱなし
日米FTA(自由貿易協定)をめぐる貿易交渉が、遅くとも9月の国連総会での日米首脳会談、早ければ8月24〜26日にフランスで開かれるG7サミットでの日米首脳会談での合意をめざして急ピッチで進んでいます。
茂木経済再生相は15日、閣僚級協議をワシントンで21、22日に開くと発表し、「日米双方に利益となる成果を早期に達成できるよう全力で取り組みたい」と述べました。
「密約」の実行を迫るアメリカ
官邸支配のもとで進む秘密交渉の真相は闇に包まれていますが、明確なことは二つあります。
一つは、4〜6月に行われた日米首脳会談で、「5月決着」を吹っ掛けたトランプ大統領にすくみあがった安倍首相が、「参院選が終わったら何でもやるから、それまでは待ってほしい」と泣きつき、参院選後にアメリカ言いなりに決着をはかるという「密約」の実行を迫られていること。
現に、渋谷和久TPP政府対策本部統括官は、「米側からはトランプ大統領が4月から交渉しており一刻も早く成果がほしいと指示しているとして、9月下旬にニューヨークで開かれる国連総会期間中の日米首脳会談で『なんとかいい発表ができないか』との要望があった」と自民党に説明し、“密約通り実行しろ”という催促が交渉の現場で行われていることを認めました(農業協同組合新聞、8月6日)。
農産物犠牲の売国外交
もう一つは「自動車を守るために農産物を犠牲にする」戦略の安倍政権に対し、トランプ政権が「農産物も自動車もアメリカの利益が第一だ」と強硬に要求しており、これが交渉の焦点になっていることです。つまり…
日本“農産物で譲歩し、日本車への制裁関税や輸出制限の回避を勝ち取る。その上で、あわよくばアメリカの自動車関税をTPP(環太平洋連携協定)並みに削減・撤廃したい”
アメリカ“日本は農産物でTPP並みかそれ以上に譲歩しろ。自動車はTPPには縛られない。合意できなければ、日本車への制裁関税も辞さない”
これを裏付けるように、アメリカの新聞「ウォールストリート・ジャーナル」(8月2日)は次のように報じました。「日米両国は、米農産物の対日輸出を拡大する一方、米国による日本車への関税の脅威を取り除くことを盛り込んだ限定的な貿易協定で合意することをめざしている」
ヤクザのような脅しに屈するのか
つまり、アメリカは自動車産業の保護は無傷のままにし、日本車に25%の高関税をかけるという一方的な脅しをやめてやるから、日本はその見返りにアメリカ産農産物の輸入を拡大しろ――というのです。ヤクザに“刺されたくなければ、金を出せ”と脅され、これに屈するのに等しいといわなければなりません。
また「朝日」(8月4日)は、米側が自動車で軟化しているとの見方を否定し「今回(8月2日)の協議でも、米側は自動車などの工業製品にかける関税について具体的な譲歩は示さなかった」としたうえで、「今後、米側は(高関税)の『脅し』の撤回を駆け引き材料として、輸入車にかけている関税の25年間での撤廃など、TPPではいったん受け入れていた関税削減を拒もうとする可能性が高い」と報じています。
安倍首相は参院選後の8月8日、「日米双方にとってウィンウィン(共存共栄)となるような早期の成果を目指す」と見えを切りました。しかし、密約に従って農産物を差し出し、自動車でもアメリカに押されっぱなしという状態の、どこが「日米双方にとってウィンウィン」なのか!
食料自給率が過去最低に落ち込んだ現状で、「腰抜け外交」「負け犬外交」はただちにやめるべきです。
(新聞「農民」2019.8.26付)
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