豚コレラ
農民連・畜全協ふるさとネット
これはもう非常事態だ
農水省に3回目の要請
ワクチン接種し、養豚守れ
「これはもう非常事態だ。国はなぜワクチンを接種させないのか」「抑え込みに失敗した責任を国は認めるべきだ」――収束どころかますます感染が拡大している豚コレラの問題で、農民連と畜全協(畜産農民全国協議会)、農民連ふるさとネットワークは7月31日、農水省に3回目となる要請を行いました。
豚コレラは、昨年9月に岐阜県で感染が確認され、これまでに岐阜県、愛知県を中心に7府県で34事例(68農場)が発生し、12万7000頭余が殺処分となっています。とくに7月24日には三重県いなべ市、29日には福井県越前市の養豚場でも発生し、面的にも拡大の一途をたどっています。
さらに深刻なのが、野生イノシシへの感染拡大が加速していることです。国はこれまで野生イノシシ対策として、岐阜県南部を中心に感染した野生イノシシの移動を防ぐ防護柵の設置や、ワクチンの経口投与(ワクチンを混ぜたエサをまく)などの対策を行ってきましたが、感染は防護柵を越えて現在も拡大中。長野県で27頭、福井県、三重県に続いて、富山県でも野生イノシシの感染が確認されており、その発見地点近くの養豚場では豚コレラの発生が確認されています。
全国どこでも発生しうる危険
要請で農民連は、これまで農民連が繰り返し要求してきた「豚コレラワクチンの接種」を、今回も改めて要求しました。
しかし農水省は、「豚コレラ対策の柱は、養豚場での飼養衛生管理の徹底と野生イノシシ対策の2つ」と、従来方針を一歩も出ない回答に終始し、養豚農家の切実な要求となっているワクチン接種は「現時点では検討していない」と回答。
参加者から、「国境での侵入も阻止できず、拡大の抑え込みにも失敗した国の責任をどう考えるのか」との声があがりましたが、農水省は「重大な事態だとは考えるが、国の責任と言われると…」と明確には回答しませんでした。
また、「飼養衛生管理の徹底という従来対策では止め切れないのは明らかだ。この期に及んでなぜワクチンを使わないのか」、「豚コレラワクチンは非常に効き目の高いワクチンで、打てば豚が死ぬことはほとんどなくなり、接種豚も問題なく食用にできる」との声も上がりましたが、農水省は「ワクチンを接種しても発症はしないが感染は止められず、ワクチンで抗体ができた豚なのか、感染した豚なのか判明しなくなる」などと、難色を示しました。
参加者は、「日本全国どこでも発生しうる危険性をもっと直視するべき」「日本に養豚農家や豚がいてこその豚コレラ対策だ。ワクチンを接種し、まず豚の命を、養豚農家を守ることを最優先に考え柔軟に対処せよ」と重ねて訴えました。
さらに参加者とのやりとりのなかで、現在の特定家畜伝染病防疫指針では、まだ感染していない豚に予防的に豚コレラワクチンを接種することは認められていないこと、現在、ワクチンの備蓄は100万頭分しかなく、全国でいっせいにワクチン接種するにはまったく不足していることなども判明。また農水省は、イノシシ対策として、日本全国のすべての養豚農場に防護柵の設置を義務付ける方針であることも明らかにしました。
要請には、日本共産党の田村貴昭衆院議員が同席しました。
(新聞「農民」2019.8.12付)
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