海洋プラスチック問題を考える
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日本は世界2位の排出国
関連/「マイ米袋」持参で量り売り
日本のプラスチックごみ排出量は年間903万トン(2016年・プラスチック利用循環協会)、1人あたりにすると年間約70キログラムにも上ります。使い捨てプラスチックごみの排出量も多く、米国についで世界2位、1人あたり年間32キログラムになるといわれています(2018年・国連環境計画=UNEP=)。
これまでペットボトル等のプラスチックごみは「リサイクル」という名目で海外に毎年百数十万トンも「輸出」してきました。
その最大の受け入れ国であった中国が18年に新たなプラスチックごみの受け入れを禁止し、タイなどもこれに追随する動きを見せています。そのため、日本国内で処理をしたり大幅に排出を減らしたりする必要がでてきました。
いわゆる「リサイクル」は排出量
全体のわずか7%弱
日本はプラスチックごみの8割以上を「有効利用」していることになっていますが、内訳を見てみると、イメージと実態がだいぶかけ離れていることが見えてきます。
プラスチックのリサイクルは「材料リサイクル(粉砕して他のプラスチック製品の原料にする)」「化学リサイクル(原料化、ガス化、油化)」「熱リサイクル(燃料化、焼却発電、排熱利用)」の3つに大きく分けられますが、総排出量903万トンのうち524万トン(全体の6割弱)は熱リサイクルとなっています。40万トンの化学リサイクルも大半は燃料として利用され、単純焼却76万トンと合わせて640万トンは焼却されてしまいます。
材料としてリサイクルされているのは211万トン、そのうち149万トンは「輸出」され、実際に原料として再生されているかは把握されていません。
残る国内リサイクル分、つまり私たちが通常イメージする「リサイクル」は62万トン、全体のわずか7%弱にすぎないのです(一般社団法人プラスチック循環利用協会)。これが“有効利用“の実態です。
農業用プラ資材が流出した報告も
農業の分野からももちろんプラスチックごみは排出されます。ビニールハウスの骨組み、ビニールシート、マルチシート、ネット、肥料の袋、農薬の容器などなど。また、肥料が樹脂で覆われた徐放肥料・被覆肥料の殻はプラスチック樹脂や生分解性プラスチックのものもあるのですが、分解が遅く、圃(ほ)場から流出したものがマイクロプラスチックの発生源となっているという報告もあります。
削減へ動き出した世界
日本は抜本的対策はなし
前回でも述べたとおり、G7(主要7カ国首脳会議)やG20各国はプラスチックゴミ排出削減に向けて動き出しています。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一つに、「2025年までにあらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」ことが定められました。日米は署名しませんでしたが、18年の海洋プラスチック憲章では英独伊仏加EUは2030年までに100%のプラスチックをリユース・リサイクル可能にするか、または熱回収に回すことで合意しています。それ以外の国も含めて、レジ袋、プラ容器、ストロー等を禁止したり規制したりする動きが広がっています。
EUでは「プラスチック戦略」が定められ、2030年までに全てのプラ容器包装をリサイクル可能なものとし、使い捨てを削減し、循環型経済をつくるとしています。
グローバル企業をはじめとして、企業も2025年や30年など期限を切ってプラ容器包装をなくすか、紙製品に置き換えるか、またはリサイクルを進めるなどの取り組みが始まっています。
一方、日本政府の取り組みは腰が引けています。欧州各国がプラスチック製品の規制に踏み込んで削減目標を立てているのに対し、日本の対策は「海洋への流出抑制」が主眼となっており、根本的な対策にはなっていません。
大量生産・大量消費やめて
再使用・再資源化に転換を
この問題を解決するためには、大量生産・大量消費という社会構造を変えていく必要があります。
プラスチックゴミを減らすために3つのR=(Reduce‥削減、Reuse‥繰り返し使用、Recycle‥リサイクル、再資源化)が必要とされていますが、まずは使い捨ての容器包装を「大幅に」削減することが不可欠です。
日常生活でプラスチック製品をまったく使わないというのは考えにくい社会ですが、個人レベルでできるだけプラスチックの使用を減らしていくことは可能ですし、そのような取り組みはすでに始まっています。
市民として企業や政府の動きに注目し、遅れている分野への取り組みを促していく運動、リサイクルと称しながら、ほぼ燃やしているだけの実態から、再使用・再資源化という本来の意味のリサイクルに切り替えさせていく運動も必要になってくると思います。
(おわり)
「マイ米袋」持参で量り売り
千葉・佐倉市 香取美乃さん
千葉県松戸市で産直市をしたり、地元の道の駅などに出したりして、直売に力を入れています。でも消費者に売る時の袋や包装容器などがどうしてもプラスチック製になってしまうのが悩みの種で、せめて米袋だけでもと紙製を使っています。
ところがこの紙製の米袋が丈夫な上に、使い勝手が良く、お客さんの方から米の量り売りに「この袋にまた入れて」と古い米袋を持って来てくれるようになりました。今では多くのお客さんが「マイ米袋」持参です。
じつは以前、玉子のパックも紙製を再利用していて、お客さんの反応も良かったのですが、パック業者さんがどういう訳か紙製を扱わなくなり、プラスチックにせざるをえませんでした。プラスチックでない手ごろな値段の包装容器がもっと市販されていればいいのに、と思っています。
(新聞「農民」2019.8.5付)
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