ネオニコチノイド系農薬
胎盤を通り抜け、胎児に移行
北海道大学研究チームが報告
6月12日の環境科学討論会の口頭発表で、母親が食べものから摂取したネオニコチノイド系農薬は、胎盤を通り抜けて、胎児にも移行することが、北海道大学の研究チームにより報告されました。
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ミツバチの「蜂群崩壊」がきっかけでネオニコチノイド系農薬への関心が高まりました |
これまでの研究で新生児の尿からネオニコチノイド系農薬と代謝物が検出されていましたが、母乳由来なのか、胎児期に母胎経由で伝わったのかは判断できていませんでした。
そこで新たに、胎児を有するニホンザルの標本に注目し、その母体と胎児の血液、胎盤、各臓器の詳細な分析を進めました。結果、胎児の臓器からネオニコチノイド系農薬と代謝物が検出されました。この結果は、胎盤を通じて胎児にネオニコチノイドが届くことを示唆するものです。
さらに、研究チームは、妊娠しているマウスにネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンを投与する実験を行って、実際に母マウスから、胎児のマウスにクロチアニジンが移行しているかを調査。クロチアニジンは胎盤を「速やかに」通って、母から胎児に移行していることがわかりました。
また、この報告では、日本人を対象に、有機食材を食べる前と食べた後などの条件で尿中におけるネオニコチノイド系農薬が減少することも確認しています。
なお、今回の発表を構成する独協医科大学による新生児尿のモニタリング研究は、科学誌『PLOS ONE』に発表されました。極低出生体重児(1500グラム未満)は、生後48時間は乳を飲まないため、検出されたネオニコチノイドは母体由来であると考えられます。ヒトにおいても、ネオニコチノイドが母体から胎児に移行することが、世界で初めて証明されました。
ネオニコチノイド系農薬は環境への影響やマウス実験で神経毒性の疑いが強まりつつあります。今回の研究で、神経未発達な胎児への移行の可能性が出てきたことで、よりネオニコチノイド系農薬の人体への影響を注意深く見ていく必要があります。新聞「農民」では今後も最新の情報をお知らせしていきます。
発表資料は(一社)アクト・ビヨンド・トラストのサイトでダウンロードできます。
(新聞「農民」2019.7.29付)
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