家族農業重視への転換に向け
日本有機農業研究会が開催される
日本有機農業研究会が、国連「家族農業の10年」スタートと「農民の権利宣言」の採択を契機に、家族農業重視への転換に向けて、現在の農政の課題を探ろうという研究会を、東京都内で開催しました。
講師は、明治大学農学部の北出俊昭元教授。北出さんは、農家の高齢化と戸数減少、食料自給率の低下といった日本農業の現状は、鉱工業の経済成長最優先、トリクルダウン(※大企業や富裕層を優遇することで経済活動が活性化され、富がしたたり落ちて、庶民も潤うという経済理論)政策への転換などによって引き起こされてきたと指摘。「この路線を引き継ぎ、さらに『企業が世界で一番働きやすい国づくりをめざす』とより“正直”に明言し、実践しているのが安倍政権だ」と述べ、規制改革推進会議主導の安倍政権の農政を批判しました。
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講演する北出元教授 |
そのうえで「日本の社会と風土に適しているのが家族農業。とくにさまざまな耕種を組み合わせ、小さな田畑を最大限に活用して生産性を上げる複合経営を見直すときではないか」と述べ、「お役人やコンサルタント会社まかせにせず、自分たちの頭で地域の農業のあり方を考えていく必要がある。国連『家族農業の10年』を単なるキャンペーンでなく、日本農業の抜本的改革の契機にしてほしい」と、強い期待を寄せました。
会場からは、「中国などでは資本主義的な大規模農業がうまくいっている事例もあり、家族農業が合理的となる条件は何か」といった質問や、「家族農業を守るべきという意見に大いに賛同する。そのためにはフードチェーン(※農業生産から食品の消費までの流れ)のなかで、家族農業の特徴を企業経営との対比でとらえる必要があるのではないか」などの意見があがりました。
(新聞「農民」2019.7.29付)
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