「農民」記事データベース20190729-1370-01

海洋プラスチック問題を考える
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2050年には海の魚の総重量に匹敵

 海洋に漂う大量のプラスチックごみ……。1990年代後半、海洋学者がこの問題を告発したことで注目が集まるようになり、様々な研究者や環境団体により少しずつプラスチックごみによる海洋汚染の実態が知られるようになってきました。
(農民連食品分析センター 坂本一石)


何が問題?生活との関わりは?
私たちはもうすでにプラゴミを食べている…

 私達が日常使っているプラスチックごみの一部は、正しくリサイクルされたり処分されずに、川の流れに乗って海洋に流出してしまっています。海洋中に存在するプラスチックゴミの総量は1億5000万トンと推計され、さらに年間800万トンが新たに流入しているとも言われています。今のペースでいくと、2050年には海洋中の魚の総重量に匹敵するようになるとの推計もあります。

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ペットボトルや服など身の回りにはプラスチック製品があふれています

 これらプラスチックごみは波風や紫外線にさらされ、次第に小さく破壊されながらも、数年から数百年もの長期間にわたって環境に存在し続けます。

 このプラスチックごみを海の鳥獣が誤って食べることで死に至るケースは多く、またさらに細かく分解され「マイクロプラスチック」(注)となったものはプランクトンや魚に取り込まれ、次第に高等生物に移行していきます。プラスチックごみやマイクロプラスチックは汚染物質を引きつけやすく、それが生物濃縮を引き起こすリスクも懸念されています。

 東京湾で取れたカタクチイワシのほとんどの胃袋から、また、各国の海水から作られた食塩の中から、あるいはミネラルウオーターの中にまでマイクロプラスチックが存在していたという調査結果もあります。私たちはすでに日常生活の中でプラスチックごみを摂取してしまっているのです。

 少し前までは化粧品や洗顔料・歯磨き粉に研磨剤としてポリエチレンなどのマイクロビーズが含まれており、これらもマイクロプラスチックの発生源になっていたのですが、昨年2月に市販の製品の原材料を見て回った時点でマイクロビーズが含まれている製品はほとんどありませんでした。業界が早めに対策に動いたようです。

 サミットでも

 2015年G7(主要7カ国首脳会議)ドイツ・エルマウ・サミットでは海洋ゴミ問題に対処するための行動計画が策定され、17年にはG20ドイツ・ハンブルク・サミットでも行動計画の立ち上げが合意されました。

 18年のG7カナダ・シャルルボワ・サミットでは日米以外の5カ国とEU(欧州連合)が自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名。そして先日のG20大阪サミットでは、首脳宣言に、2050年までに海洋プラスチックごみをゼロにすることを目指した「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が盛り込まれるに至りました。

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G20大阪サミット

 次号で、別の角度からのプラスチックごみの問題点、農業との関わり、対策などをみていきます。

(次号につづく)


(注)マイクロプラスチックとは

 大きさが5ミリ以下のプラスチック粒子。環境中に放出されたプラスチックゴミが波風や紫外線により細かく粉砕されたもの。衣類の繊維カス、化粧品や洗顔料、歯磨き粉に含まれる研磨剤、工業用研磨剤、靴やタイヤのカス等。素材としてはポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。

(新聞「農民」2019.7.29付)
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2019年7月

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