農家の税金対策
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災害等に適用される雑損控除
災害が頻発しています。雑損控除は普段あまりなじみがないので、必要になったときには戸惑うものです。あらかじめ概要を学んでおきましょう。
雑損控除は災害・盗難・横領のいずれかにより、生活に通常必要な資産に損害を受けたときに、所得控除として適用できます(『税金対策の手引き』34〜35ページ)。詐欺や脅迫による損害の場合には、不可抗力とみなされず、雑損控除の対象にならないとされています。
雑損控除の対象となる「災害」は、(1)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害、(2)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害、(3)害虫などの生物による異常な災害とされています。
雑損控除が適用される資産は、生活に通常必要な住宅、家具、衣類、現金、墓石、車両などであり、別荘や1個30万円を超える書画・骨とう・宝石・貴金属などは対象外とされています。
雑損控除か災害減免(『手引き』50ページ)か、いずれか有利な控除を適用できます。
家族の所有する資産にも
申告主本人が所有する資産だけでなく、本人と生計を一にする配偶者その他の親族で、被害を受けた年の総所得金額等の合計額が38万円以下の人が所有する資産について損害を受けた場合も適用できます。
雑損控除の計算
次の(A)(B)のうち、大きい方の金額が控除額になります。
(A)「損失金額」―「保険などで補てんされる金額」―「総所得金額の10分の1」
(B)「災害関連支出」―5万円
「雑損失の金額の計算書」を使って計算してください。用紙は国税庁のホームページや税務署にあります。
「災害関連支出」には、「原状回復のための支出」と「取り壊し、除去等の費用」があります。「被災資産の損害額」と「原状回復のための支出」は、同じものを別の角度から見るように重なる内容があるので、調整して計算することになります。
(A)の「損失金額」は、「被災資産の損害額」と「原状回復のための支出」のいずれか大きい方の金額です。
「被災資産の損害額」を個別に計算することが困難な場合には、「損失額の合理的な計算方法」(『手引き』38〜39ページ)により計算することができます。工事費用については、最新の金額を税務署に問い合わせてください。各都道府県の金額と全国平均額とのどちらか大きい金額を使います。
(B)の「災害関連支出」は、「被災資産の損害額」を超える金額について計算するので、「原状回復のための支出」から「被災資産の損害額」を差し引いた金額に、「取り壊し、除去等の費用(保険金等で補てんされる分を差し引いた金額)」を加えた金額になります。
引き切れない控除額は繰り越す
その年の所得から引き切れないときは、翌年以降3年間繰り越すことができます。
事業用資産と業務用資産の損害の扱い
事業用資産が災害等により損害を受けた場合の損失額は、雑損控除の対象にはならず、不動産所得、事業所得(営業・農業)、または山林所得の計算上、必要経費に算入されます。これらの所得が赤字になった場合、他の所得との損益通算ができます。その年の所得から引き切れなかった被災事業用資産の損失額(純損失)は、白色申告であっても翌年以降3年間繰り越すことができます。
雑所得や事業規模に至らない不動産所得(アパートなどはおおむね10室未満、独立家屋はおおむね5棟未満)にかかる業務用資産については、災害・盗難・横領による損失の全てについて、その所得の計算上必要経費に算入する(適用前の所得金額が上限)か、雑損控除を適用するかを選択することができます。
(新聞「農民」2019.7.8付)
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