「農民」記事データベース20190708-1367-01

萬代(島根県農協中央会)
元会長に聞く

安倍政治ストップ!野党共闘に期待

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 参議院選挙が始まりました。農協関係者は安倍農政をどうみているのか。島根県農業協同組合中央会元会長で、日本の種子(たね)を守る会副会長の萬代宣雄さんに聞きました。


 プロフィル 萬代宣雄(ばんだい・のぶお)

 1942年、島根県出雲市生まれ、77歳。75年、出雲市議会議員(7期28年)。2003年、いずも農業協同組合代表理事組合長。10年、島根県農業協同組合中央会会長(16年まで)。13年、新世紀JA研究会特別相談役・名誉代表。17年、日本の種子を守る会副会長。


国民の安全な食料を確保するために
自国の農業を守る

画像  私は2016年に島根県農協中央会会長を退任するまで、農業に携わり、地域の声を農協や行政に反映させたいという思いでずっとやってきました。

 若いときは、住んでいる地域を何とかしたいと、仲間たちと一緒に農協に提案したり、農協青年部の役員を引き受けたりしながら、農協はわれわれの思いを聞き、実行してくれる代弁者の役割を果たすべきであると考えていました。こうして農協青年部から総代と理事を出し、われわれの願いが通じる農協をつくるべく努力してきました。

 一方で、政治の分野でも、農協青年部のグループから県議会議員を出すことによって、われわれの願いが実現できるようにしようと、自らも市議会議員を務め、仲間たちと運動を進めてきました。こうして出雲市から県議が誕生し、議会を通じて農業振興を訴えてきました。

 腹立つ 「TPPの5品目守った」

 議員をやり、農協の役員をやりながら感じたことは、今の農政が農家にとって温かいものになっているのか、このままでいいのかという疑問でした。

 その点で、とくにいま一番腹が立っているのは安倍政権の問題です。2015年のTPP(環太平洋連携協定)交渉妥結後に甘利TPP担当大臣が、重要5品目(米、麦、牛・豚肉、乳製品)594項目のうち、関税撤廃が約3割になったことを報告し、その後安倍首相が「重要5品目は守った」と言い切ったところに強い怒りを覚えました。

 交渉事だから、「力及ばず、どうにもなりませんでした」と正直に言えばいい。しかし、それを「関税は守った」とシラをきる。これで安倍晋三という人物が信頼できなくなりましたし、自民党そのものも信用できなくなりました。

 最初にウソをついたものだから、ウソに歯止めがきかなくなっています。国民をだますのもほどほどにしろと言いたい。

 総合農協として地域と自然守る

 今の農政の問題は、食料自給率のことが何も議論されていないことです。「次にどうしたら選挙に勝てるか」ということしか頭にない。国としてどうやって自国の農業・食料を守るのかという確固とした政策が求められています。そのためには消費者の理解と協力も必要です。

 しかし、政財界からは「農協が悪い、改革せよ」という攻撃がかけられています。全国の農協の80%以上は総合農協として地域と自然を守っています。農協は何よりも農家のためのものであり、農山村の地域にとってどうしても必要なもの。全国農協中央会(JA全中)の一般社団法人化など農協組織を根底から否定する動きは許せません。

 さらに戸別所得補償や価格保障など、農家の生活と経営を支える施策は必要です。スイスでは、農家の生活を支えるために、安い輸入農産物より、高い国産品を選ぶよう、子どもたちに教育されているように、自国の農業を守ることは、結局は消費者が安心・安全な食料を食べることにつながるのです。

 腰抜け国会議員操って種子法を

 自国の食料を守ることでは、主要農作物種子法(種子法)が昨年、短い審議時間で廃止されてしまいました。これは、規制改革推進会議が農水省と組んで、「これが農業関係者の総意だ」と言わんばかりに、腰抜けの国会議員を操って強行したことであり、「自国の食料がどうなってもいいのか」と強い怒りを覚えます。

 種子法の廃止をうけて、食料を守ろうと「日本の種子を守る会」が結成され、山田正彦さん(元農水相)のお誘いで、私が副会長を務めることになりました。いま各都道府県で「種子条例」の制定が広がり、私の地元の島根でも制定を目指してがんばりたいと思っています。

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「日本の種子を守る会」の結成総会(2017年7月3日、東京都内)

 選挙が終わればなんでもやる

 日米FTA(自由貿易協定)交渉でも、安倍首相はトランプ大統領の言いいなりになっています。アメリカとはいい付き合いをしなければならないことはわかりますが、自国の利益を守るために体を張って説得する努力をしなければなりません。それが「選挙が終わったら関税撤廃でもなんでもやる」というのでは、まるで属国のようです。TPP以来、農家を裏切り続けてきた安倍首相ですから、ここでも「ノー」と言えない無策ぶりを証明したようなものです。いつもアメリカばかり気にしている日本ではだめです。

 安倍政権を代えるためにも野党がまとまらなければなりません。参議院選挙では野党同士の協力が進んでいますが、「安倍政治を止める」の一点での共闘はいいことだと思いますし、大いに期待しています。


農民連青年部夏の学習交流会in石川
「加賀百万石のアグロエコロジー」
◇ 2019年7月28日(日)午後1時〜
      29日(月)午後1時
◇ JR小松駅東口集合
◇ 視察先  小松市 西田農園
       加賀市 かが有機農法研究会
◇ 企画内容 アグロエコロジー(地域の生態系や伝統を守り、持続可能な農業や社会を目指す運動)がテーマ。小松市で土が持っている力を生かし、有機野菜を栽培している「西田農園」と、水鳥の餌場を守り、幻の農林21号を復活させるなど環境保全型農業を進める「かが有機農法研究会」を訪問します。
◇ 参加費 1万円(部分参加あり)
◇ 問い合わせ・申し込み=農民連青年部
            (担当・渡辺しんじ)
 フェイスブックの農民連青年部イベントページ(下記QRコード参照)にも情報があります。ご覧ください。

(新聞「農民」2019.7.8付)
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2019年7月

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