「農民」記事データベース20190701-1366-08

島根県農業技術センターを訪ねて

現場では種子事業継続に努力

 主要農作物種子法(種子法)が2018年3月に廃止されましたが、各地の農業試験場・農業技術センターは、従来通り種子事業を実施し、農業振興のために努力を続けています。現場はどうなっているのか、島根県農業技術センター(出雲市)を、県農民連の長谷川敏郎会長、河津清会長代行とともに訪問しました。


生産性を高める栽培法開発
品質に優れた新品種を育成

 新たな課題への対応に備える役割

 県農業技術センターは、建物敷地(本館棟・付属舎等)14・3ヘクタール、農地11・4ヘクタール。正規職員約100人(行政職と研究員各50人)と嘱託・臨時職員等約50人が勤務しています。

 「農業技術センターでは、農業の新技術、環境保全や経営の合理化に必要な試験研究・調査分析のほか、種苗の保存配布、技術指導と普及に関する業務を行っています」。長野正己所長はこう紹介します。

 技術普及部の塩冶(えんな)隆彦部長は技術センターの役割について「生産性を高める栽培法の開発や品質に優れた新品種育成など新しい技術を生み出すこと、優良種苗の供給や病害虫発生の監視、新技術の普及など県農業の基礎を支えること、地球温暖化や燃油の高騰、食の安全性の確保など新たな課題への対応に備える役割を果たしています」と説明します。

 今回の視察では、種子法の役割の一つであった、県内で生産される主要農作物(水稲、大豆、二条大麦)の原種・原原種の生産と種子生産農家・農業団体への提供に関わる、収穫、乾燥、保管の各施設を見学し、説明を聞きました。各施設での種子の生産・保存や種子生産農家への栽培管理指導等の懸命な努力がしのばれるとともに、問題点も浮き彫りになりました。

 種子事業の業務紹介や現地の説明には、県農林水産部農産園芸課水田農業グループの岡田拓男グループリーダーのほか、技術センター技術普及部の勝部淳史専門農業普及員、栽培研究部の荒木卓久作物科長、安達康弘専門研究員が同席・同行しました。

 品種ごとにコンバインや乾燥機

 各施設では、他の品種が混入しないよう厳重に管理されており、水稲の原原種は穂の状態で保存し、播種(はしゅ)しています。また、原種用には品種ごとにコンバインや乾燥機があります。

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品種ごとにコンバインが装備されています。左が長谷川会長、右が河津会長代行

 20年以上の長期にわたり使用しているコンバインや乾燥機も数多くありました。

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水稲糯(もちごめ)品種ミコトモチの育苗を前に

 原種・原原種の保管施設は、年間通して気温15度、湿度30%で運用され、種子が5年間保存できる条件となっています。そして、施設に何か異常があれば、職員の携帯電話に連絡が入ります。しかし、それはすでに異常が発生してからの通知であり、停電の際の非常電源はありません。

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原種・原原種の保管施設

 県は、「水稲優良種子生産体制整備支援事業」により種子生産者団体の機械・設備導入を支援。老朽化した選穀施設の修繕にも取り組んでいますが、全面的な施設の更新には着手されていないもようです。

施設の老朽化・予算も問題

 継続・発展のために条例化を

 長谷川会長は、次のように感想を語ります。

 「技術センターが、県の農業・農家のためにがんばっている様子がよくわかると同時に、施設の老朽化や予算の問題点も明らかになりました。種子法が廃止されたなかで、県は条例でなく、要綱で対応できるという立場ですが、今後、さらに法的裏づけと予算措置が必要ですし、それをしっかりと支える種子条例の制定が不可欠だと改めて思いました。県農民連としても、条例制定のためにがんばります」

(新聞「農民」2019.7.1付)
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2019年7月

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