「農民」記事データベース20190624-1365-02

農民連とアメリカの農民団体

日米FTA反対で共同声明


日本の農家もアメリカの農家も
日米貿易交渉・FTAを望んでいない

 日米貿易交渉・日米FTA(自由貿易協定)について、日米農業界の対立として描くメディアが存在する中、農民連とアメリカの農民団体・全米家族農業者連合(NFFC)、アメリカのシンクタンク、農業・貿易政策研究所(IATP)がこのほど、これに反対する共同声明を発表しました。

 新しい協定は過去の過ちを固定化する 

 5月24日に出された声明は、これまでの貿易協定は「自立した家族農業の破綻、農業における企業的集中、環境悪化、食の安全基準の低下」をもたらしてきたと指摘。「アメリカと日本の新たな協定を通じ、これまでの貿易協定の過ちを固定化しようという企てに対してわれわれは反対する」と表明しました。

 とくに、アメリカの畜産部門について、精肉業者・加工業者が独占的に支配し、高密度の工場型家畜飼育を行う中で、(1)成長促進剤としてのホルモン剤の使用による人体への影響、(2)サルモネラ菌や大腸菌の発生など食の安全の低下、(3)糞尿(ふんにょう)による環境汚染や地球温暖化の悪化など、問題が蔓延していることを告発。日本への輸出拡大は、日本の生産者を痛めつけるだけでなく、アメリカにおいて企業支配を強め、工場型家畜生産を拡大することになると警鐘を鳴らしました。

 日米両国の消費者の運動も妨害する

 声明はまた、日米貿易協定・FTAには、アメリカ・メキシコ・カナダ協定に含まれる遺伝子組み換え生物(GMO)貿易促進の条項が「盛り込まれる恐れがある」と述べ、これが現実となれば「日本の種子や食料の保護措置を解体するとともに、遺伝子組み換え技術を適切に制限しようと求める食料・農業に関心を持つアメリカ人の取り組みをも損なう」と警告。日米協定は、食の安全を求める日本とアメリカ双方の消費者の運動も妨害することになると訴えました。

 さらに、日米FTAに含まれる可能性が高い投資家が国家を訴える投資家対国家紛争解決条項(ISDS)や手頃な価格の医薬品へのアクセスを妨げる知的財産に関するルールについても拒否しました。

 自給率を悪化させ飢餓・食料を危機に

 共同声明はまた、日本の農産物市場が世界レベルで自由化された場合、日本の食料自給率は14%に落ち込み、米生産は90%減、豚肉・牛肉生産は70%減となるという農水省の試算を示し、人口1億2000万を超える日本がさらに食料輸入を増やせば、「広範に存在する飢餓・食料問題を悪化させることになる」と危機感を表明しました。

 声明はその上で、これまでの貿易協定と決別し、家族農業と食料主権を尊重し、前進させる新たなアプローチ(対応)を求めました。

 NFFCはアメリカ各地に約3万人の会員を持つ家族経営農家の有力組織で、国際農民組織ビア・カンペシーナの加盟団体です。声明には、食品安全センター(CFS)、食料・水ウォッチなど他のアメリカの団体も賛同。日本では、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)、全農協労連(全国農業協同組合労働組合連合会)も賛同しています。

(新聞「農民」2019.6.24付)
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2019年6月

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