エコひいき農業で野菜をつくろう!
第1回
堀 俊一
“天敵”を利用した有機無農薬栽培
昨年、農文協から『わたしのエコひいき農業』を出版した堀俊一さんに、有機無農薬での野菜作りのポイントを連載で紹介していただきます。
「エコひいき農業」とは、堀さんのつくった言葉。「エコシステム=生態系」に「えこひいき」をかけたもので、畑の環境と生きものの結びつきに目を向けて、天敵を保護・利用した農業を呼びかけています。
さあ、「エコひいき農業」をやってみませんか。
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安全で安心な農産物の生産を望んでいる消費者や生産者は少なくありません。そのためには農薬や化学肥料に頼る栽培を止めなければなりません。
“害虫も雑草も排除”ではうまくいかない
なるべく病気のでない時期を選び、作物の生命力を生かして、害虫と益虫(天敵)の管理をする必要があります。
これまで常識とされていた、害虫も雑草も排除するというやり方ではうまくいかない、というのが私の考え方です。そして、農産物は完全無傷なものにこだわるよりも栄養や食味の点など中身の充実に目を向けることが大切だと思います。
さて、最近の研究で、有機無農薬栽培の畑で病害虫の発生をくい止める自然抑止力が発見されました。有機無農薬栽培を行うものにとって朗報です。これから私の体験を含めて栽培や防除法についての連載を始めるにあたり、その概要を述べます。
(1) 地域の気候や土質にあった品種を選び、根張りをよくして、抵抗力のある野菜作りをする。堆肥や地力向上作物を使って土壌微生物の働きをいかした土作りをする。
(2) 一度に畑全部を除草せずに、雑草と作物で少しの害虫と天敵が共存する環境を作る。
(3) 害虫と天敵の違いは、同じ虫がたくさんいれば害虫、その中に異形の虫が少しいれば天敵。 例えば(写真)は、小さなアブラムシ(写真中、左上の緑色の虫)の中にいるテントウムシの幼虫。体長は約1センチあり、アブラムシの天敵。
(4) 防除のために生育初期と収穫期に防虫網を使うことも必要。中に天敵を入れると効果的。
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堀さんの著書
『わたしのエコひいき農業 有機無農薬栽培の実際』
▼出版 筑波書房
▼著者 堀俊一
▼B5判 96ページ
▼価格 1800円+税
筆者略歴
1949年栃木県生まれ。東京農工大学卒業後、1972から2008年まで、農業改良普及員など。おもに野菜担当。退職後、就農。妻の実家の農地を借用し、労働力は本人と妻の2人。耕作面積70アール、うち50アールは有機無農薬で、栽培品目は露地野菜(多品目少量栽培)とダイズ、ラッカセイ。20アールは水田、他にラッカセイとクリ。販売方法は直売。
(新聞「農民」2019.5.27付)
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