「農民」記事データベース20190527-1361-06

「国連家族農業の10年」記念

全国クロマグロ漁師サミット

青森・大間

関連/リレートークでの報告から

 「国連家族農業の10年」のスタートを記念して全国で「食と漁の地域未来フォーラム」開催を決めたJCFU全国沿岸漁民連絡協議会(以下、JCFU)は、長崎県対馬市、香川県丸亀市での開催につづき4月27日に、3回目となるフォーラム「全国クロマグロ漁師サミット」を、青森県大間町で開催しました。
 サミットは、地元大間町、大間町商工会、大間町観光協会、大間漁協、奥戸漁協などと共催。会場は、色とりどりの大漁旗で飾られ、長崎県から北海道の沿岸マグロ漁師ら400人を越す参加者で満席となりました。


全国沿岸漁民連会員が1万人突破

 地元の勇壮な「津軽海峡海鳴り太鼓」で幕開けしたサミットでは、北海道焼尻島から参加した高松幸彦JCFU共同代表が「JCFUは今年の夏で結成4年を迎えるが、大間サミット開催を前に、会員が全国で1万人を超えた。この背景には大規模漁業を優遇し小規模家族漁業をないがしろにする政府の水産政策がある」とあいさつ。

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大漁旗がはためき、400人がつめかけた会場

 続いて地元のマグロ漁師、大間漁協まぐろはえなわ部会の泉徳隆顧問があいさつし、「私たちは沿岸漁民を苦しめる国のマグロ漁業政策に再三、抗議をしてきた。安定した漁業を次世代に残すためにサミットで活発な意見交換をしてほしい」と呼びかけました。

 金澤満春大間町長、坂三男大間漁協組合長、笹渡義夫農民連会長、生田喜代子日本の伝統食を考える会世話人が来賓あいさつしました。

 JCFUの二平章事務局長が開催趣旨を説明。「沿岸家族漁業は経営体の94パーセントを占める国内漁業の主人公。家族漁業が全国浦々で活躍することで国境を監視し、海岸環境と資源を守り、消費者へおいしい魚介類を届けてきた」と述べ、ノルウェーのマダラ漁での漁獲枠が大型船よりも小型船に手厚い事例を紹介。「日本のマグロ漁獲枠設定はこれとは真逆で、家族漁業が苦しんでいる。このサミットを機に日本のマグロ漁業政策を家族漁業重視に転換させたい。そのためにも『国連家族農業の10年』を今後の運動の柱としたい」と話しました。

 FAO駐日事務所
 ボリコ所長が講演

 基調講演では、国連食糧農業機関(FAO)駐日事務所のボリコ・M・チャールス所長が、水産団体の集会に初めて登壇。(写真)「家族農業には漁業も含む。小規模な家族農業・漁業は食糧問題だけでなく、社会経済、環境、文化面でも重要な役割を果たしており、各国ともその重要性を認識し、支援策の策定・実行を推進すべきだ」と話しました。

 津軽海峡マグロ
 女子会活動報告

 つづいて、津軽海峡をはさむ北海道と青森県のマグロ漁業応援の女性でつくる「津軽海峡マグロ女子会」の皆さんが大漁旗などでつくった独特な衣装で登場。代表の島康子さんがマグロの観光まちづくり、女子会活動について大間弁で楽しくトーク。会場をわかせました。

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会場をわかせた「津軽海峡マグロ女子会のみなさん」

 “漁師大集合”
 リレートークを

 “全国クロマグロ漁師大集合”と題したリレートークには、長崎壱岐勝本漁協の尾形一成さん、対馬美津島漁協の宮崎義則さん、上対馬町漁協の宇津井千可志さん、千葉新勝浦漁協の嶋津圭一さんと鈴木正男さん、岩手三陸漁業生産組合の瀧澤英喜さん、青森大間漁協泉徳隆さん、奥戸漁協の能登勝男さん、北海道戸井漁協の下山浩助さん、北るもい漁協高松幸彦さんらの沿岸マグロ漁師が登場。これに米澤誠大間町商工会長が加わり、意見交換しました。

 最後に、大間漁協の若手漁民でもある渡邊良彦さんが、「沿岸クロマグロ漁と家族漁業の未来に向けて」とする大間アピールを紹介。参加者全員の拍手で採択しました。

 要望書まとめ、
 6月に中央行動

 JCFUでは、クロマグロやスルメイカの沿岸漁業を守るよう求める要望書を近くとりまとめ、大間アピールとともに6月に行う中央要望行動で国に提出することにしています。


リレートークでの報告から

 ◎クロマグロ資源に圧力をかけているのは、統計からみても大規模なまき網漁業で小規模なつり・はえなわの家族漁業ではない。産卵期のまき網漁業こそ規制すべきだ。

 ◎沿岸漁業への扱いが不平等。

 ◎対馬漁業を守るため漁民の要望5項目にとりまとめ、5325人の署名とともに長崎県議会に提出した。

 ◎対馬近海では、まき網がイカ釣り船の灯火で魚を集め漁獲する違法操業をしている。国も県も取り締まらず、野放しだ。ルールを守らせるべきだ。

 ◎千葉では漁獲配分枠が少なく困っている。マグロ漁ができず船を壊し、廃業した漁民もいる。

 ◎定置網に入ったマグロを水揚げできず、放流するが、大半は死んでいる。国は資源のために漁獲規制をしていると言うが、資源も漁民も苦しめている。

 ◎北海道のつり・はえなわ漁民に対して30キロ以下の小型魚の漁獲配分枠はゼロだった。はえなわ漁にかかる魚は大半が小型魚で、放流した。これでは漁民が生きていけない。放流した魚も生きてはいないだろう。

 ◎配分漁獲枠は過去の実績で行われるので、若者が新規参入できず困っている。制度を見直してほしい。

 ◎クロマグロはまちづくり、地域活性化にとって大切。漁獲規制のため、昨年はマグロ祭りが中止となった。沿岸マグロの規制で地方創生ができないのでは困る。

(新聞「農民」2019.5.27付)
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2019年5月

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