「軽減」税率のまやかし
安倍政権延命の実績作り
東京大学名誉教授 醍醐 聰さん
消費税10%増税に伴って導入されようとしている「軽減」税率。安倍政権は「負担軽減」と宣伝していますが、実態はどうなのか。3・13重税反対中央各界代表者集会で東京大学名誉教授の醍醐聰さんが行った記念講演の要旨(一部)を紹介します。
消費税10%増税
安倍政権は「軽減税率」導入で「負担が軽減される」と言いますが、本当にそうでしょうか。
表1の「軽減税率による消費税負担の軽減額」をみると、2人以上の勤労世帯で年間収入額が200万円〜250万円の世帯は、月当たりの負担軽減額が902円で1人約450円。年収600万円〜650万円の世帯は負担軽減額が1119円(1人約560円)。年収1500万円以上の世帯は負担軽減額が1605円で1人当たり800円程度です。これでは逆進性を緩和するための軽減といっても焼け石に水です。
諸外国の付加価値税の税率構造(表2)をみると、日本で食料品や水道水を8%に据え置いたとしても、他国と比べて最も高い税率です。ほかの生活に密着した品目も、8%に据え置いたとしてもかなりのものが高い税率です。
「軽減」税率がいかにまやかしであるかがわかります。
今回の消費税増税は、公約挫折を何が何でも回避して安倍政権を延命させる「実績作りのための増税」です。ポイント還元の広報宣伝に、国の1年分の広報予算の約5倍にあたる400億円をつぎ込んでいます。こうした増税対策費は安倍政権の維持・延命のための国費の私物化にほかなりません。
国の税収構造の変遷を1990年から2018年まででみると、所得税は26兆円が2018年は19兆円に。法人税は18・4兆円から12・2兆円にそれぞれ減り、マイナス13兆円程度となっています。しかし、消費税は90年の4・6兆円から18年の17・6兆円と13兆円増えており、所得税・法人税が減った分を消費税で穴埋めしている形になっています。税収の合計額が、90年で60・1兆円だったのが18年で59・1兆円と、税収がまったく増えていないのも、何のための消費税増税だったのかと怒りがわいてきます。
税金の集め方、使い方を監視し、ものを言うのは納税者の権利です。まずは10%増税をストップさせることです。「やればできる」という達成感がさらに次の目標への運動のエネルギーになり、安倍政権を追い詰める力になります。ご一緒にがんばりましょう。
(新聞「農民」2019.4.29付)
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