国連「家族農業の10年」を記念してスタート食と漁の地域未来フォーラム
全国の沿岸漁業・家族漁業者が横に手をつなぎ、日本の家族漁業と魚食文化を発展させようと、2015年に発足した「JCFU全国沿岸漁民連絡協議会(以下、沿岸漁民連)」は、今年の夏で満4年を迎えます。 発足当初1500人だった会員は、現在6000人に急成長。その背景には沿岸漁民の声を無視したクロマグロの漁獲規制や、企業優先に舵(かじ)を切る改悪漁業法への不満があります。 日本の漁業では94%が10トン未満の小規模漁船が営む沿岸家族漁業。今年から始まる国連「家族農業の10年」や国連「農民の権利宣言」では、世界的に「家族農業」や「家族漁業」が食料生産の主役であることが示されました。 そこで沿岸漁民連では「家族農業の10年」を今後の運動の柱とし、今年から10年間、全国で「食と漁の地域未来フォーラム」を開催することを決めたのです。
対馬の漁業と食広め
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フォーラム会場 |
対馬市は四季折々おいしい魚が捕れる国境の島として有名で、近年はわずか50キロの対岸の韓国から来島する大勢の観光客でにぎわっています。
フォーラムは近年、沿岸クロマグロの漁獲規制やスルメイカの不漁で経営困難を抱える対馬の沿岸漁民と漁協を励まし、対馬の漁業と郷土食を消費者にも知ってもらおうと企画されました。全国16都道府県から70人の消費者と、島内からのべ100人の漁業関係者が集まり、消費者と漁民との盛大な交流の場ともなりました。
フォーラム開会式には、地元の桐谷雅宣対馬市副市長も出席、対馬の歴史を交えて歓迎あいさつしました。
対馬の郷土料理を学ぶ会の山川房子代表は、主婦たちによる伝統食を継承する活動と、郷土食をたくさんの写真で紹介し、郷土料理を次世代へ伝えていくことの大切さを強調。二宮昌彦厳原漁協組合長は、自らの対馬漁民としての波乱に満ちた歩みを紹介しながら「対馬の海と山の暮らし」のすばらしさについて語りました。
質問に答える左から二宮組合長、山川さん、古川さん |
北日本漁業経済学会の二平章会長(沿岸漁民連事務局長)が特別報告。企業利益を最優先にする安倍政権の「農業改革」「漁業改革」は地域の農業・漁業を破壊するものだとし、「日本でも9割以上を占める小規模家族農業・漁業の経営安定がなければ、国民にとっての安心・安全な食料生産、農村・漁村の地域振興、伝統文化の継承はありえない」と報告。国連の「家族農業10年」「小農民の権利宣言」の呼びかけに応えて、日本でも大きな運動を作り出していこうと呼びかけました。
続いて沿岸漁民連の共同代表である宮崎義則対馬市曳縄(ひきなわ)漁業協議会長が報告。水産庁のクロマグロ対策を批判し、曳縄協議会を立ち上げたことや、この2月に「対馬周辺での大型まき網・底びき網船の操業取締」、「クロマグロ漁獲制限による沿岸漁民の困窮化対策」などを要求する陳情書を、5325人の漁業関係者の署名とともに、長崎県知事と県議会議長あてに提出したことを紹介。沿岸漁民自らが要求を掲げて県や国の行政を動かしていくことの大切さを訴えました。
最後に、厳原漁協所属の青年漁業者・岸川和寿氏が、対馬漁業について若者の立場から報告。きびしい中でも対馬の漁業の未来を背負ってがんばっていく意気込みを語りました。
発酵サツマイモからデンプンを取りだしてつくる対馬名物の「せんだんご」や、押し出し麺にした「ろくべえ」をはじめ、地鶏やマダイの「いり焼鍋」、「サザエご飯」、韓国から伝わった味付き豚の「とんちゃん」料理、新鮮サバの「チリチリ鍋」など盛りだくさん。旬魚のブリやヒラス(ヒラマサ)、サワラ、沖カブ(カサゴ)、スルメイカをはじめ、対馬ならではのアナゴの刺身なども並びました。
圧巻だったのは美津島西海漁協から提供された40キロを超えるクロマグロの姿造り。口の中でとろける味に、参加者も大感激。対馬漁民の心意気と地域漁業の大切さを知ることのできたフォーラムでした。
40キロを超すクロマグロの姿造り |
大阪・松原市 関戸しげみ |
[2019年4月]
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