「農民」記事データベース20190422-1357-02

豚コレラ
農民連・畜全協ふるさとネット

豚コレラ封じ込めるため
地域限定しワクチン接種を

農水省に2回目の要請


 「一刻も早くワクチン接種を実施してほしい」「飼養衛生管理だけではまん延は止まらない」「発生農家の再建と生活支援への強化を」――感染拡大が深刻化している豚コレラの問題で、農民連と畜全協(畜産農民全国協議会)、農民連ふるさとネットワークは4月8日、2回目となる農水省への要請を行いました。

 豚コレラは、4月12日までに岐阜、愛知、長野、滋賀、大阪の5府県、43農場に及ぶ19例が確認され、7万6000頭の豚が殺処分される事態となっています。農水省は前回の交渉で「同一地域内の面的な伝播(ぱ)」が緊急ワクチン接種の要件だと説明。日本養豚協会や、日本養豚開業獣医師会も、「地域を限定して緊急ワクチンを接種すべき」と農水省に要請しており、現在の状況がワクチン接種の条件を満たしていることは明らかです。

 要請には静岡、群馬、千葉、神奈川の養豚農家のほか、愛知県田原市の養豚農家で、同じ養豚団地内で豚コレラが発生し、自らの養豚場も全頭殺処分となった瓜生(うりう)陽一さんも参加。参加者は「日本の養豚がなくなってしまいかねない危機的状況だ。一刻も早くワクチン接種を実施し、まん延を止めてほしい」と訴え、切迫した要請となりました。

発生農家の再建・生活支援強化を

 輸出戦略よりまん延止めて

 静岡県浜松市の養豚農家で、畜全協会長の森島倫生さんは、「養豚農家での飼養衛生管理の徹底だけでは、もう限界。四六時中、豚舎に異常がないかとハラハラしながら見回っている。国はどんな事態になったら、ワクチン接種をするのか」と質問。

 農水省は、「養豚場での早期発見、早期殺処分が防疫の基本だ。また野生イノシシにワクチンを混ぜたエサを食べさせることもしている。現在は殺処分や埋却が間に合わないという状況ではなく、ワクチン接種の段階ではないと考えている」と回答しました。

 参加者は、「それは埋却が追い付かないほど豚コレラが増えて、死体が放置されるような極限状態になるまでワクチン接種をしないということか」、「生き物の命の扱い方として、それでいいのか」、「もう抑え込めているとはいえない現状だ。全国に拡大する前にワクチン接種を」、「(ワクチンを使うことで輸出が難しくなるため)輸出を成長戦略にしている安倍政権の意向か」と追及。しかし農水省からの明快な回答はありませんでした。

 また瓜生さんは、「これ以上豚コレラを増やさないために」と、苦悩しながらも約3700頭に及ぶ全頭殺処分に応じた胸の内を吐露。「今の殺処分の補償の評価額は時価であり、子豚がきちんと大きく育って出荷できた場合の収入には程遠い。また全頭殺処分となれば、次の出荷ができるようになるまでには2年近くがかかり、収入がなくなる。その間の生活保障と、再建までのかかり増し経費の支援がどうしても必要だ」と、訴えました。

補償金への課税やめよ

 アフリカ豚コレラ対策も強化を

 このほか参加者は、ワクチンが開発されていないアフリカ豚コレラの国境措置の対策強化や、殺処分などの補償金への免税措置なども強く要請。飼養衛生管理の研修会などへの講師派遣を求めると、農水省は「ぜひ協力したい」と応じました。

(新聞「農民」2019.4.22付)
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2019年4月

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