TPP11と日欧EPAで
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都内の飲食店で行われていたEPA先取りキャンペーン |
1月の輸入量は5万トン強。国内生産1カ月分(部分肉換算で3万トン弱)をはるかに上回っています。
牛肉は、WTO(世界貿易機関)上のセーフガード(緊急輸入制限)によって、四半期ごとに輸入量が17%増を超えると関税が38・5%から50%に引き上げられます。しかも、引き上げはTPP11加盟国には適用されません。TPPのセーフガードが、もともと発動困難な条件を課しているのに加えて、アメリカが脱退した後も条項を修正していないためです。
その結果、WTO上のセーフガードが発動されれば、TPPに加入していないアメリカだけに適用され、アメリカの強い反発を招くことは必至です。
イオンでは日欧EPA発効記念セールが… |
財務省・税関は、アメリカに“忖度(そんたく)”して「セーフガード発動水準まで残り何万トン」という異例の“情報提供”を行って輸入抑制を指導。その結果、2〜3月は1月に比べると輸入は減りましたが、「4月の輸入動向について、商社は『TPP発効直後に急増した1月並みに輸入されるのではないか』とみる」と報道されています(日本農業新聞、4月6日)。
関税は4月から冷蔵・冷凍ともに26・6%に下がっており、セーフガードのスキを突き、TPP11を自在に操って牛肉輸入拡大をはかる商社のずる賢い商法が今後も続くことは必至です。
ワインは即時関税ゼロ、豚肉もチーズも大幅関税引き下げ。輸入商社はこれを見越して1月の輸入をおさえ、2月に入って一挙に輸入を増やしました。1月に比べると豚肉は2・7倍、ワインは2・3倍という膨張ぶりです。
EUからの豚肉輸入は3万6千トンを超え、日本最大の豚肉生産県・鹿児島の月出荷量の2倍以上、TPP11(カナダ・メキシコ・チリ)、アメリカからの輸入と合わせると8万1千トンで、日本全国の月出荷量(部分肉換算で8万トン弱)に匹敵する水準です。
1965年には100%だった豚肉自給率は、17年に初めて50%を下回って49%になり、牛肉も16年に40%以下になって17年は36%です。鈴木宣弘東大教授は、「TPPプラス」(TPP11+日欧EPA+日米FTA〈自由貿易協定〉など)の影響によって、豚肉の自給率は25年に22%、35年に11%に、牛肉は23%、16%に下がると試算しています(農業協同組合新聞、19年2月8日)。この1〜2カ月の動向は、試算の恐ろしさを先取りしているといえるでしょう。
大手流通資本は昨年10〜11月にEUからのチーズとワインの輸入を増やし、“日欧EPA記念バーゲンセール”を大々的に行いました。巨大FTAに便乗し、日本農業も食の安全も無視した利益本位のやり方を許すわけにはいきません。
特に豚肉とチーズは、アメリカ以外からの輸入が1・2〜1・6倍になる一方、アメリカからの輸入は豚肉が14%、チーズが7%減っており、アメリカのシェアはかなり落ち込んでいます。
「こういう事態に直面すれば、アメリカはTPPに戻ってくるはず」というのが安倍首相の「とらぬタヌキの皮算用」でしたが、トランプ政権は、それほどヤワではありません。それどころか「アメリカ第一主義」をふりかざし、日本に対し、日欧EPA・TPP11以上の譲歩を強硬に迫ってくることは必至です。
亡国の総自由化路線強行をきっぱり転換し、TPP11からの離脱、日欧EPA廃止、そして日米FTAを断固として拒否することこそが求められています。
第12回院内集会「日米FTA交渉をただす!」 |
日 時 4月23日(火)午後2時〜5時 場 所 参議院議員会館B―109会議室 内 容 【第1部】 午後2時〜3時 鈴木宣弘さん(東京大学教授)講演会 3時〜3時半 各分野から日米貿易交渉の問題点を提起 (農業、食の安全、医療・保険、公共調達、規制改革など) 【第2部】 3時45分〜5時 各省庁担当者との意見交換 (外務、内閣、農水省など) 資料代 500円 よびかけ TPPプラスを許さない!全国共同行動 問い合わせ先 農民連 電話03(5966)2224 |
[2019年4月]
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