就農支援制度活用と産直で
地域の担い手育成
担い手づくり先進地視察研修交流会
千葉県内産直センターなど3カ所視察
農民連ふるさとネットワークと農民連は3月21、22の両日、「担い手づくり先進地視察研修交流会」を開催しました。今年は千葉県の(農)多古町旬の味産直センターと(農)房総食料センター(横芝光町)、(農)さんぶ野菜ネットワーク(山武市)を訪問し、後継者育成や新規就農者の受け入れなどの取り組みを視察。多古町旬の味産直センターの若手生産者の角崎真琴さんや農業生産法人「ゆうふぁーむ」、さんぶ野菜ネットワークの新規就農者、川並正樹さんのほ場も見学するなど2日間かけて先進事例を学びました。
3カ所の視察で共通していたのは「自分の組織だけではなく地域の担い手をどう育成するか」という考え方でした。その背景には生産者の高齢化と地域の衰退への危機感があります。
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「ゆうふぁーむ」の新規就農者で社長の境野心作さん(右から3人目)と同じく新規就農者の川島健次さん(同2人目) |
新規就農者受け入れと販売支援で生産を維持
3組織は、農業次世代人材投資事業(旧青年就農給付金)、農の雇用事業、農林中央金庫の新規就農研修事業を活用しながら新規就農者の受け入れを進めています。
多古町旬の味産直センターでは農業生産法人「ゆうふぁーむ」を設立し、新規就農者を受け入れ、今では新規就農者3人が経営の中心です。主な販売先が多古町旬の味産直センターという関係になっています。
房総食料センターでは「農業人育成プロジェクト」を立ち上げ「農の雇用事業」を利用して8人の生産者が研修生を受け入れています。「当初は房総センターで雇用し派遣をしていたが、やはり直接の方がやりやすかった」と田山修司専務。
JAS有機野菜を中心に生産するさんぶ野菜ネットワークでも、新・農業人フェアなどに出展し研修希望者を募集。農場見学を経たうえで2年または4年間、受け入れ農家で農の雇用事業を利用した研修後、就農しています。下山久信事務局長は「新規就農者の受け入れを進めていたおかげで、今でも生産が維持できています」と話します。「このままでは地域のコミュニティーは持たない。輸出どころではない事態。国内の生産基盤がガタガタになりつつあるのにおかしい」と農政にも大きな疑問を投げかけます。
3組織に共通しているのが、新規就農者の生産物を買い取り、販売先につなげていることです。そのおかげで新規就農者の経営が安定。定着を支えています。
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1月に独立したばかりの川並さんの畑も見学(山武市) |
生産に専念できる支援体制をつくって
また生産力の維持についても取り組みを進めています。多古町旬の味産直センターではニンジンの保冷庫やパックセンターを整備し、生産者の袋詰めの負担を軽減しています。房総食料センターもパックセンターを設置し、こちらはホウレンソウや小松菜などの葉物にも対応しています。「生産者には袋詰めの作業にとらわれず、栽培や収穫に専念して生産力を維持してほしい」というねらいがあります。
5〜10年先を見据えて生産者も事務局も育成
多古町旬の味産直センターでは、生産者だけではなく事務局の担い手も育成が必要との観点で、若手生産者と一緒に事務局も参加して、学習会や研修などを重ねています。「地域のリーダーとなる生産者と、それを支えられる事務局の育成を目指しています」と鎌形芳文専務は説明します。
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鎌形専務から多古町旬の味産直センターの取り組みを聞く参加者 |
房総食料センターでも生産者とともに理事や職員も次世代の育成を進めています。「親世代がお金は出しても口は出さず見守ることで、次の世代が育ってきています」と田山さん。「次世代プロジェクト」として若手が5〜10年先を見据えた話し合いをスタートさせ、センターに対する要望や5年先の目標を聞き取り、作付け計画に反映させるなどしています。
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房総食料センターでは葉物の袋づめ作業も視察 |
参加者の感想
奈良県農民連 林 大輔さん
農民連に入ったばかりで、初めて見ることばかりの2日間でした。県連のある明日香村周辺は少量多品目生産が中心で、千葉には千葉の農業のやり方があるのだと実感しました。生産者からはよりおいしい農産物を作りたいという気持ちが強く伝わってきました。これからもいろいろなことを見ていかないといけませんね。
(新聞「農民」2019.4.8付)
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