「農民」記事データベース20190311-1351-01

3・11原発事故から8年

福島県民を切り捨てる
安倍政権を許さない

南相馬・二本松市、飯館村で実証試験の検討が明らかに
福島県農民連事務局長 佐々木健洋


放射能汚染土の再利用
全国に広がる可能性

 2011年3月の東京電力福島第一原発事故に伴い、福島県をはじめ広範囲の国土が放射能に汚染されました。学校の校庭や住宅周辺の表土を剥(は)ぎ取り放射性物質を取り除く「除染」が行われました。除染により発生した汚染土は県内で約2200万立方メートルとされ、各地の「仮置き場」に保管されています。その後、原発周辺に造られる中間管理施設に運び込まれ30年間保管され、最終的には県外の最終処分場に持ち出すことが県民と国との約束でした。

 ところが環境省は、原発事故発生時の2011年から汚染土壌の再利用を水面下で検討していたのです。そして実証試験を南相馬市、二本松市、飯館村で再生利用を進めようとしていることが判明しました。

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山林での土壌調査のようす。ほ場に筒状の計測器(手前の筒状のもの)を持って行き、測定する。土壌が乾いていないと正確にできない

 二本松市では、2017年12月に市議会で公道のアスファルトの下の路床材に使用するという事業実施の報告がされ、大問題になりました。地元住民への説明会で「総意」があったと環境省は説明していましたが、実際は21世帯中9戸のみの参加で、何も質問がなかったから総意を得たことにしたというあまりにも強引なやり方でした。

 地域住民を国が分断し、総意を得たと自作し、生活道路に8000ベクレルの汚染土を敷き詰め、最終処分地にする国の姿勢は決して認めない――これを許せば、福島県内だけでなく、全国で放射能汚染土利用が進み、放射性物質を拡散することになってしまいます。

 二本松市の実証事業は、市民の猛烈な反対運動により、実質事業の撤回を勝ち取ることができました。しかし、環境省は今でも南相馬市や飯館村で実証事業を計画しています。

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二本松市では実証事業の撤回を勝ち取りました

 国は最終処分地の確保や、移動費用が多額にかかることを理由に、汚染土を再利用し減量化しようとしています。しかし、これは東電救済でしかありません。この費用は原発を推進してきた東電と国が支払うべきものであり、住民が無用な被ばくのリスクや心理的負担を受忍して「節約すべき費用」ではないのです。

 一度原発事故が起これば途方もない費用がかかり、「原発のコストは安い」というウソを明らかにすることも必要です。

(新聞「農民」2019.3.11付)
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2019年3月

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