原発メーカー「日立」が、イギリスでの原発新設を断念
原発輸出がとん挫
(下)
英ウェールズ行動を振り返る
福島県農民連会長
根本 敬
私たちはこの土地に生かされてきた
原発阻止のために闘う農民を訪ねる
「私たちはこの土地に生かされてきた」
2018年7月15日、原発立地地域で農地を売らず原発阻止のために闘っている農民を訪ねる。
車でアングルシー島の北端まで行く。とにかく美しい。牛や羊が草を食(は)みウミネコの声が風に乗って大地を渡る。ウインドファームもあちこちに見える。
なんでここなんだ。悲しくなる。
ジョーンズさんは、酪農家らしいがっしりとした体躯(たいく)に日焼けした「満面の笑み」で迎えてくれた。
「ここに先祖が移り住んだのは17世紀、砂利採取の仕事で生計を立て農地を広げて営農を続けている」
「なぜ、土地を売らないかって聞かれるが、私たちはこの土地に生かされて生きてきた。原発ごときにこの土地は渡せない」
自分で建てた風車の前で奥さんと記念撮影。何のけれん味もない笑顔はまさに「百姓」だ。
原発周辺を散策。いい風が吹いている。原発に費やす3兆円があれば、原発の2倍の出力の風力発電が可能なのだ。なんて、愚かなことを繰り返すのか……。
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満面の笑みで出迎えてくれたジョーンズさん夫妻 |
子どもたちの瞳は美しい……が
16日、12歳から18歳の子どもたちが通う学校を訪ねる。ウェールズは、ケルト族でウェールズ語を持っている。自分たちの言語を守ろうとこの学校ではウェールズ語で授業が行われている。赤いシャツに身を包んだ子どもたち250人が体育館に入ってくる。
その瞳は美しい。
私が一番待ち望んだシーンだ。
話す時間は15分しかない。
「あなたたちには、原子力という破たんした技術の電気で生きてほしくない。このアングルシーにある素晴らしい自然のエネルギーで生み出された電気で暮らしてほしい」
子どもたちの顔を見て話しているうちに、こみあげてくるものがある。
なんて、愚かなんだ。人類は。こんな子どもたちにとんでもないものを背負わせようとしている。その表情から、子どもたちには全く「異次元」の話だったかもしれない。
「今だけ、金だけ、自分だけ」か……。
資本主義「宴の後」の片づけを次世代に先送りするその「根性」が許せない。
恥ずかしくないか? おとなたち!
原発は、その多くが農村・漁村に立地する。農民・漁民たちを金で餌食にする。しかし、スイスでもこのウェールズでも原発と闘い続ける農民に出会えた。自然への畏怖と畏敬が農民たちを支えている。
(おわり)
(新聞「農民」2019.2.25付)
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