原発メーカー「日立」が、イギリスでの原発新設を断念
原発輸出がとん挫
(上)
英ウェールズ行動を振り返る
福島県農民連会長
根本 敬
原発に翻弄される地域の人々
企業のあくどさ 改めて実感
「難しい状況。もう限界だと思う」――。1月17日、日立製作所がイギリス・アングルシー島で進めてきた原発建設計画について、同社の中西宏明会長がこう述べたという。主語がない。「原発すべてが、難しい状況。もう限界だ」が常識的認識であるはずだ。
福島県農民連は昨年7月11日から17日の日程でイギリス・ウェールズへ向かった。当時を振り返ると、原発に翻弄される地域の痛ましさ、日立などの原発企業のあくどさ、原発は人々を不幸に突き落とすことを改めて実感している。
“農業続け生きぬくしかない”
ワンモア・フクシマつくらないために
記者会見場が急きょ変更
イギリス到着から3日後の7月14日、記者会見を当初予定していたホテルに「危険な人物たち」の会見はいかがなものかという電話があったために会場が変更になった。
「えっ、そんなに私たち注目されてんだ」と驚きつつ、なによりも、原発推進勢力も神経をとがらせ、手段を選ばない構えになっているところに、今度の行動が意味あるものであることが実感させられ、がぜん闘争心が湧いてきた。
記者会見には、私と浪江町議の馬場績さんが参加。地元新聞とBBC(イギリス国営放送)のローカルラジオ、そして地元農業系テレビが来ていた。
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バンガーで記者会見。左が根本さん、1人おいて馬場さん |
記者から出された質問は、「除染して帰還を進めているが実態はどうか」。
馬場さん「帰還は進みません。2万576人のうち浪江町には553人しか戻っていません」
根本「除染・帰還・復興という今の国の政策は間違っています。除染は、移染です。帰還困難区域を抱えた自治体の方向性が見えていないのです。結局、自己責任におとしめられる危険があります」
そして、地元農業系テレビ取材。原発反対運動を支援している大規模畜産農家の農場でのインタビューがあり、ディレクターも農家とのこと。
ディレクター「福島で農業を続けることは厳しいと思うか」
私「被害者では終わらない。生きぬくしかない。ワンモア・フクシマをつくらないために」
神経をとがらせる
原発推進勢力
原発は地域経済に不可欠?
その日の午後に、アングルシー議会議員との意見交換。控え室で名刺交換。議場に入る。様々な委員会が開催されているので集まったのは8人。多くが原発推進の議員。反対派は2人。
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アングルシー議会議員との意見交換会 |
推進派議員「ここは経済的にも貧しい。どうしても原発による雇用確保が必要。若者がいなくなってしまう」。どこかで聞いたセリフだ。
反原発派議員「原発事故後、日本の世論は原発に厳しい意見が多いのに、いま、日本は再稼働、新設が進んでいると聞いているが、日本の民主主義は機能しているのか」
私「いま、日本に民主主義は機能していません」
最後にどうしても言いたかったので、「原発の是非を雇用とかお金だけで決めないでほしい。次世代への責任をどうするのか。今だけ、金だけ、自分だけの価値観から抜け出す知恵を次世代と一緒に考えてほしい」。
物腰の柔らかな議員と目があった。終わってから、その議員が「僕も3人の孫がいるんだ」とつぶやいたと聞いた。
(つづく)
(新聞「農民」2019.2.18付)
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