「農民」記事データベース20190218-1348-07

農家の税金対策
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医療費控除の注意点

 医療費控除は、『農家のための「税金対策の手引き」』34ページにあるように、その年に支払った医療費から保険金等で補てんされる金額を差し引き、さらに10万円または総所得金額の5%のどちらか低い金額を差し引いた金額が所得から控除できます(セルフメディケーション税制による特例を選択することもできます)。

 医療費控除の対象となる医療費の範囲については、『手引き』40ページに詳しく書かれている通りです。治療や分べんのために病院や針きゅう師、助産院などに支払ったものは対象になりますが、美容や健康増進、予防のためのものは対象になりません。医薬品の購入費についても同様です。

 生計を一にする親族の医療費も

 申告主が負担せず、生計を一にする親族が支払った医療費も控除対象になります。その親族を扶養しているか否かは関係ありません。親族の所得要件もありません。治療を受けたとき、または支払ったときに生計が一であれば控除できます。同じ治療費を別の人が重ねて控除の対象とすることはできません。

 対象となる通院費の範囲

 病院や助産院、老人保健施設などに通うために、電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合の通院費は、診療費などとともに医療費控除の対象となりますが、自家用車を利用した場合のガソリン代などは対象にならないとされています。所得税法73条にある「人的役務の提供の対価のうち通常必要なもの」に当てはまるかで判断されます。

 タクシー代はどうでしょうか。急を要する場合や、バスなどが利用できない場合には全額が対象となります。そうでない場合は、公共交通機関でかかる金額までが対象となります。

 知り合いに運転を頼んで乗用車で通院したときに支払った金額は、単なる謝礼ではなく、労賃として支払っていれば対象になります。

 付添人の交通費はどうでしょうか。子どもの通院に親などが付き添ったときは、子どもの年齢や病状などから一人で通院させると危険な場合は、通常必要なものとして対象になります。

 治療費を超える補てん金

 医療費控除は領収書の保存(明細書を提出する場合)または提出が必要ですが、交通費は領収書をもらうことが現実的でないため、例外的に領収書がなくても控除できます。

 医療費を補てんする保険金等を受け取る場合は、医療費から保険金を差し引いて控除額を計算しますが、支払った入院費を超える保険金を受け取った場合、超えた金額をその他の医療費から差し引く必要があるでしょうか。保険金を差し引くのは、あくまでも補てんの対象となる医療費からです。超えた金額をその他の医療費から差し引く必要はありません。

 ちなみに、身体の傷害に基づいて受け取った保険金や共済金は非課税所得なので、医療費を超えた金額も所得として申告する必要はありません。

(新聞「農民」2019.2.18付)
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2019年2月

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