寄稿
「改悪」卸売市場法は
弱肉強食への道
(下)
東北地区水産物卸組合連合会
菅原邦昭
市場の役割は国民生活の安定
1999年と2004年の「『改正』卸売市場法による規制緩和」とは、各市場で取引関係者を集めて、「取引委員会」をつくり、そこで合意した場合に限り、それまで違法や例外とされていた取引方法をその市場に限定して行うことができるとしたものです。
そもそも、改悪されたとはいっても、卸売市場制度の根幹が「地域自治」を前提としていることには、一切の変更など課されていません。
地域ごとの産業や経済、住民のくらしの実情に沿って、開設者である自治体が、「国民(地域住民のこと)生活の安定に資する(卸売市場法第一章・目的)」ことは、今でも、開設者はもちろん、国、農水省にさえ求められている義務なのです。
法を変えたから、各自治体が決めた「卸売市場業務条例」並びにこの条例に基づく「市場業務規程」を変えなければならないという義務は一切ないのです。
現行「業務規程」と「改悪」卸売市場法は相いれない
今回の農水省による「業務規程の見直し」を求める文章を注意深く見れば、各市場がどのような取引方法を採用するのか、あるいは一切変更せず、現状のままでいくのかについての選択権は、百パーセント自治体そして市場関係者、地域の農林水産業者、さらには主権者・住民にあることは明確です。
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狭くて不便な東京・豊洲新市場の水産仲卸店舗 |
今、「御用関係者」などは、業務規程の見直しはしないという市場開設者や関係者に対し、「せっかく法改正までしたんだから、少しは見直しをしてもよいのではないか」などと言い寄っているという話を耳にします。
その「少しだけの見直し」とは、市場の公正公平取引原則に、「第三者販売の容認」を限定的にでも入れることを意味しています。「第三者販売」とは、とどのつまり、「強者が価格決定権をもつ」ことです。
この「第三者販売の容認」が、「正当な行為」として市場取引に持ち込まれ、その権限が一気に急拡大してしまうのは、今の社会のあり方や仕組みを少しでも考えれば、火を見るより明らかです。
いま、各市場が保持している開設者・自治体の「業務条例」に基づく「業務規程」と、「改悪」卸売市場法は、決して相いれません。
農林水産業に従事するみなさんと市民の力で、現行の「業務規程」を守りましょう。
(おわり)
(新聞「農民」2019.2.18付)
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