小学6年生が粟(あわ)づくりに挑戦
“食育から地域づくりへ”
長野県佐久市 佐久城山小学校
子どもたちも保護者もつながる
佐久農民連の荻原徳雄さんが協力
長野県佐久市の佐久城山小学校では、10年以上農業体験授業を行っています。2〜3年生が麦踏み体験や自分たちが育てた材料でコロッケをつくります。取り組みに協力しているのが佐久農民連の荻原徳雄さん(84)です。
保護者の塩川浩志さん(50)は「この学年はまとまりがよく、6年生になっても何かやりたいとの思いで荻原さんに相談し、粟の栽培を提案されました」と話します。
荻原さんは「粟は古く縄文時代から日本での栽培が始まり、ミネラルなども豊富でもともと注目していました。この機会に日本の食文化を子どもたちに伝えたいと提案しました」とねらいを説明します。
塩川さんも「英語を話せることも大切だが、話す思いが育ってないといけない。縄文時代から伝わる粟なら」と学校に提案。担任の多田将希教諭と菊池悠河教諭も協力し、社会科の授業の一環として行うことになりました。
アワって何?
多田先生は「去年初めて子どもたちと米を収穫し、子どもたちの成長の場として素晴らしい企画で、もう一度機会があればやりたいと考えていました。ちょうど社会科の授業で縄文時代の歴史を教える中で、『粟って何?』と子どもたちから疑問が出たこともあり、提案を受けて社会科の一環として取り組むことにしました」と語ります。
5月下旬から種まきや観察、手入れを行い、10月25日に収穫を行いました。12月1日の収穫祭では、地元の「maru cafe(マルカフェ)」店主の柳澤零さん(35)がメニュー開発に協力しました。もともと荻原さんのナタネ油をお店で使用していた柳澤さん。「子どもたちが農から距離があるなかで、食に関わりたい、農家になりたいという子が一人でも出てきてくれたら」と思いを語ります。
収穫祭では粟を使った季節のサラダ、根菜粟汁、粟餅デザートを子どもたちと保護者が分担・協力して調理。柳澤さんが粟を練りこんだバンズを用意してバーガーを作り、みんなで食べて楽しみました。
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子どもと保護者が協力して粟を調理しました |
ぜひ下の子にも
保護者の蓮見裕美さんは「自分たちで育て、収穫し、調理するというのは良い食育の一環だと思います。校区内の方がたくさん協力してくださり、先生も楽しんでやってくれました。本当に恵まれていたと思います」と感想を話し、「ぜひ下の子たちにも体験させてあげたい」と期待を寄せます。
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粟を見る保護者と話す荻原さん(左) |
新幹線開通後の佐久市では新しい住宅地が開発されています。「新しく引っ越してきた人たちが多いなかで、子どもたちが協力して取り組めるので、子どもたちだけでなく、保護者のつながりもでき、新たな地域のコミュニティーづくりにつながっています」と荻原さん。多田先生も「地域の人たちのおかげでこうした取り組みができました」と地域のつながりの力を強く感じています。
地産地消や子どもたちの食育から始まった取り組みですが、それ以上の花が開く大きな取り組みとなっています。
(新聞「農民」2019.1.7付)
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