「農民」記事データベース20181217-1340-01

繁殖牛放牧で耕作放棄地対策

ひと、牛、田んぼでまちおこし!

椛蜴q町アグリネットワーク
益子光洋さん(畜産農家)
茨城・大子町


 農家の高齢化と耕作放棄地対策に、繁殖牛の周年放牧を取り入れて、耕畜連携で地域農業を守ろうというとりくみが、茨城県大子(だいご)町で行われています。中心的役割を担っている畜産農家の益子光洋さんを訪ねました。

 大子町は茨城県北西端に位置し、面積の約8割は山林という典型的な中山間地。以前から和牛の繁殖が盛んで、県のブランド牛「常陸(ひたち)牛」の素牛の3割を生産しています。しかし近年では高齢化や離農が進み、出荷頭数は2011年から16年の5年間で3割以上も減少。耕作放棄地の増加やイノシシなどの鳥獣害も深刻になっています。

 そんな現状に、益子さんは地域の農家とグループを作って、畜産クラスターをはじめとしたさまざまな補助制度を活用し、放牧と耕畜連携を実践しています。

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放牧場の入り口で説明する益子さん

 放牧方式は、母牛を出産1カ月前に放牧場から牛舎の分娩(ぶんべん)室に移動、出産させ、子牛は産後3日で早期離乳させます。早期離乳によって母牛の次の発情が早まるため人工授精・妊娠がスムーズにすすみ、産後90日前後でまた放牧することができるようになります。「放牧すればその期間、牛舎を有効活用できるので、新たな投資をせずに増頭できるし、牛舎からの糞出しという重労働が軽減されるのもありがたい。高齢者や小規模農家にこそ勧めたい方法」と益子さん。

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種付け前後の放牧を間近にした母牛たち

 放牧地は1頭当たり30アールほどでよく、山林や耕作放棄地などを10アールあたり2000円で借りています。電気牧柵とソーラーパネル、水飲み場の設置費用は30万円ほどですみ、しかもその半額は補助制度を活用。

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電牧はこんなに細く、低くても大丈夫

 さらに放牧場はなるべく牧草地に隣接して設置し、10アールあたり3万5000円が支給される経営所得交付金制度などを利用して水田に牧草を栽培し、刈ってすぐ隣の放牧牛に与えられるようにしています。

 地域の水田農家には耕畜連携の補助制度などを利用して、飼料稲やホールクロップサイレージの栽培を委託。水田を借りる場合にも10アールあたり田起こしなら5000円、田植えなら7000円などの作業料金を支払うようにして、「必ず耕種農家にも農作業に携るようにしてもらい、自分の農地への関心を忘れないことが何より大切」と、益子さん。

 「畜産農家が全部がんばるのではなく、耕種農家と分業して、みんなで補助制度を分け合い、地域を守っている。牛を飼うことで、牧草や飼料稲を作る耕地も大切にすることになり、地域全体の町おこしにもつながっていくと信じている」

(新聞「農民」2018.12.17付)
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2018年12月

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