日本・モザンビーク・ブラジル
3カ国民衆会議
プロサバンナ事業は中止に
大規模開発より小規模農民守れ
プロサバンナ事業に反対し、世界の食と農の問題を考える3カ国民衆会議が11月20日〜22日まで都内で行われ、同事業に反対する日本、ブラジル、モザンビークの市民、農民らが一堂に会しました。プロサバンナ事業は、1980年代に日本のODA(政府開発援助)を使ってブラジルのセラード(低木草原)で行われた開発モデル(方法)を、今度はモザンビークで展開しようと計画されている事業です。具体的には、大豆を大規模かつ工業的に生産し、日本・ブラジル両国の政府・企業が整備した鉄道・港湾を使って、日本をはじめ世界に輸出しようというもの。
種子も土地も私たちのもの
2日目の21日は、国際シンポジウム「危機の21世紀を超えて、つながりあい、食の幸せを未来に手わたすために」が聖心女子大学で開かれました。
第1部の現状と取り組みの報告では、3カ国の代表が訴えました。ブラジル小農民運動(MPA)のジルベルト・シュナイダーさんは、2016年のクーデター以降、多国籍企業の利益を代弁する政権が誕生し、現政権もその路線を引き継いでいるもとで、種子の支配、ビジネス化が進んでいることを解明しました。
一方で、「アグリビジネスに対抗し、アグロエコロジーの実践、種子を取り戻す運動も強くなっている」と述べ、トウモロコシを例に、もともと種子はコミュニティーのなかで農民が品種改良を重ねてきたことを強調しました。
「プロサバンナにノー!女性キャンペーン」の代表たちは、モザンビークで起きつつあることと、彼女たちの取り組みを報告。伝統的に種子は自家栽培で、タネや情報の交換が行われ、コミュニティーそのものであること、「タネは買うものでなく、先祖から受け継いできたもの」だと述べました。
いま、モザンビークでも地球温暖化をはじめ、高齢化、都市化などで農業生産が困難になっており、そこにアグリビジネスが入ってきて、種子支配を行っている現状を告発。「その具体例がプロサバンナ事業だ」とし、3カ国の政府にノーを突きつけるよう訴えました。最後に、「種子も土地も私たちのもの」と歌で表現しました。
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たたかいの歌を披露するモザンビークの女性たち |
次に、日本の農家が、産消提携、有機農業の実践を紹介しつつ、企業や大規模農業を優遇する日本政府の施策を批判しました。
小規模農民こそ食糧供給できる
「食・農・くらしと地域の自立へ〜『犠牲の開発モデル』の限界を乗り越える」をテーマにした第2部では、プロサバンナ事業の内容と、その背景となっている世界の食糧と農業開発の現状が報告されました。
モザンビークから「プロサバンナにノー!キャンペーン」のクレメンテさんや現地の農村女性たちが登壇し、現地では小規模農民による自給のための食料生産が行われており、プロサバンナ開発など必要ないこと、それにもかかわらず農民が土地から追い出されたり、鉄道輸送のために生活環境が悪化するなどの現状があること、反対運動が広がっていることなどを報告。「プロサバンナ事業は新たな貧困を生みだしている。日本政府は開発をやめてほしい」と訴えました。
後半では、こうした大規模・工業生産的な農業開発でなく、小規模家族農業こそがいま世界で重要視され始めていることが報告されました。
モザンビークの代表者は、11月19日に国連総会の第3委員会で、国際農民組織ビア・カンペシーナが採択に向けて運動してきた「農民の権利宣言」が承認されたことを報告。ブラジルの「セラードを守る全国キャンペーン」のイゾレッチ・ヴィシニエスキーさんは、「アグロエコロジーは化学肥料や農薬に依存しない農業というだけでない。小規模農民の文化、生命、農地を取り巻く環境なども包摂した概念であり、人々がつながり合うスタイル、存在のあり方でもある」と述べました。
農民連の吉川利明事務局長と齋藤敏之常任委員も登壇し、齋藤さんは「日本政府に『農民の権利宣言』に盛り込まれた権利をきちんと実行させるよう、運動を強めていきたい」と発言しました。
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報告する齋藤常任委員(左) |
ネットが出展
21日は、聖心女子大学キャンパス構内で、ファーマーズ・マーケットも開かれ、農民連ふるさとネットワークも出展。8産地から22品目が寄せられ、参加者と交流しながら販売しました。
(新聞「農民」2018.12.3付)
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